上田第一中学演劇部での演劇ワークショップ
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上田第一中学演劇部が“演じる”を体験しました。
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まずは生徒全員が椅子で囲んだフロアを舞台に見立て、人とぶつからないように歩くことからスタートです。
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「舞台は観客に見せるためにつくるもの。だから役者は、常に誰かに見られている意識をもって動くことが大切」と内藤さん。生徒たちは人に見られていることを意識して、空いているスペースを探してまんべんなく広がり、大きく手を振ってさっそうと歩きます。舞台上の限られた広さの中では、この空間認識が重要なのです。
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さて、次は複雑な動きでフロアを舞台に見立てて動き始めます。まずは2ステップの歩き方で空いているスペースを探しながら動きます。続いて同じ側の手足が同時に出る歩き方(右手と右脚、左手と左脚を同時に出す同側型動作)の「ナンバ」をします。内藤さんの指示で「普通の歩き方」「2ステップ」「ナンバ」を繰り返すと、笑いが起こりながらも、生徒たちは真剣そのものな表情で動いていました。
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次に呼吸法の練習をします。息を吐くときにお腹をへこませて、ゆっくりと息を吸いながらお腹を大きくする「腹式呼吸」です。この呼吸法で、同じ声量のまま10カウント、次に20カウントを数えながら、自分の中の高音、低音と、発声が楽な音階を掴みます。さらに30までのカウントにも挑戦します。
「舞台の上では動きながら、ときには走りながらセリフを言います。だから、動いていても息が整えられる腹式呼吸の発声法で声を出すことが大事なのです」と内藤さん。そのためにも、20分間止まらずに走り続ける体力面と、声を出しながら走る技術面の両方が必要になるのです。
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今度は床に横になり、足を床から45°上げて、誰かが「1」と言ったら、続いてほかの誰かが「2」「3」「4」……と、誰ともかぶらずに「20」まで言えるように続けるゲームをします。誰かと同時に同じ数字を発声したら最初からやり直し。このゲームを通じて、周囲の空気を読む力を鍛えます。その間、生徒たちは足を下ろすことができないので、プレッシャーがどんどん高まります。無事、誰ともかぶらずに「20」まで言い終えたときは、なんともいえぬ達成感が溢れていました。
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休憩を挟んだあとは、いよいよセリフを使ったワークショップです。
「学校でいまだかつてないほどの巨大台風に襲われた生徒たちが、台風が過ぎ去った頃に屋上に上がり、思い思いの言葉を話す」という1シーンを全員で演じます。
内藤さんが用意した台本に従い、生徒たち全員で話し合って配役を決めてから、実際に椅子で囲んだフロアを舞台に見立て、講師陣を観客と捉えて演じます。
「セリフはイメージが言わせてくれる。さっきの海や森のイメージを思い出して」
ひとつひとつのセリフに対し、自分の中に生まれた感想や気持ちを込めていくイメージです。生徒たちのなかには、台風が過ぎるまで不安そうに教室で過ごしていた人もいれば、どことなく興味本位な表情をしていた人もいる……。演じている彼らからはそんな雰囲気が伝わってきました。
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「イメージがないセリフはおもしろくない。大切なのは『うまい演技』ではなく、いかに豊かなイメージを浮かべているか。イメージがないのに、イメージしているように整えている演技が一番ダメ。おもしろい芝居は、役者が会話を楽しんでいること。それは、フィジカル面の鍛錬と豊かな想像力の両方ができたときに成立するのです」と内藤さん。
2時間という短い時間のワークショップでしたが、目に見える変化を遂げた生徒たち。彼らが今後、さらにどのような成長を見せるのか、期待せずにはいられません。