【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会-2024夏-
- 開催日
- 時間
- 15:00~
- 会場
- サントミューゼ 大ホール
この夏も、群馬交響楽団の定期演奏会がサントミューゼで開催されました。同楽団の第600回定期演奏会プログラムであり、サントミューゼ開館10周年記念事業としても節目となった演奏会です。
モーツァルトの「6つのドイツ舞曲 K.600」は、第600回定期演奏会プログラムの「600」にちなんで選曲されました。ウィーンの皇王室宮廷作曲家に任命され、多数の舞曲を生んだモーツァルトが亡くなった年に書いた作品です。
ウィーンの宮廷舞踏会のシーンが目に浮かぶ、軽やかで美しい6曲。第5番はフルートとピッコロ、ヴァイオリンが鮮やかにカナリアのさえずりを表現する部分が楽しく、印象的でした。最後の第6番は美しいハーモニーの力を感じ、甘美な余韻を残します。
続いては、モーツァルトにあやかりミドルネームに「ヴォルフガンク」と名付けられたコルンゴルトの作品「ヴァイオリン協奏曲 ニ⾧調 作品35」。ステージにソリストとして現れたのは、若手注目ヴァイオリニストのマルク・ブシュコフさん。温かな拍手で迎えられました。
ウィーンで活躍後、ハリウッドに渡り映画音楽の作曲で活躍したコルンゴルト。戦後、ウィーンに戻って書かれた本作品は映画音楽のテーマを原型としています。
冒頭から、ヴァイオリンソロでドラマチックな幕開けとなった第1楽章。スリリングな展開を経て切なさや愛情も香ります。ヴァイオリンのカデンツァ(奏者がオーケストラの伴奏を伴わずに自由に即興的な演奏・歌唱をする部分)は圧巻で、雄大な朝日を見ているかのよう。第2楽章は深い愛情を思わせ、ソロの音色が優しく語りかけます。繊細な高音とオーケストラの重なりも素晴らしく、音の隅々にまで込められた感情が伝わってきます。第3楽章は躍動的で楽しく、まるで映画を観ているような心地に。躍動する飯森さん、笑顔のブシュコフさん。盛り上がったフィナーレの後、飯森さんとブシュコフさんは熱い抱擁を交わします。
惜しみなく注がれる拍手に応え、アンコール。ブシュコフさんがバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番」を聴かせてくださいました。多彩な表情を見せながら、ソロとは思えないほど厚みのある和音を響かせます。
休憩中、ロビーでは多くのお客様が飯森さんやブシュコフさんのCDを買い求めていました。
後半は「家庭交響曲 作品53, TrV 209」。飯森さんが長期的に演奏に取り組んでいるR.シュトラウス作品です。タイトル通り自身の結婚生活と家庭をテーマにした交響曲で、夫(シュトラウス)、妻のパウリーネ、幼い息子フランツと3つの主題を当てています。
前半で印象的だったのは、妻パウリーネのテーマ。活発で気丈な性格を表す一方で、優しい表情も見せます。子どものテーマが温かなオーボエの音で織りなされ、金管楽器で伯父と伯母の登場も描かれていました。
第2部では遊び疲れたフランツが眠りにつく合図として時計を思わせるベルが鳴り、夜の場面へ。夫婦の愛情がゆったりと美しいハーモニーで描かれています。
朝になりフランツが目覚めると、夫妻が子どもの教育方針を巡って言い争いを始める場面。活発に音が重なり合います。両親に「ケンカをやめて」と訴えるフランツを表すトランペットの旋律が印象的でした。最後はさまざまなテーマが次々に現れて盛り上がり、清々しくも多幸感のあるフィナーレへ。
演奏後、客席からは大きな大きな拍手と「ブラボー!」と賞賛の声が送られました。やまない拍手の中、楽器ごとにすべての奏者に起立を促し、讃える飯森さん。「難しい曲を最後までお聴きいただき、ありがとうございました。これからも上田の皆さんと強固な関係を築いていきたいと思います」と客席に語りかけ、熱気が残るホールを後にしました。
〈プログラム〉
モーツァルト/6つのドイツ舞曲 K.600
コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲 ニ⾧調 作品35
R.シュトラウス/家庭交響曲 作品53, TrV 209
〈アンコール〉
▼ソリストアンコール(ヴァイオリン:マルク・ブシュコフ)
バッハ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 BWV1003 3楽章 アンダンテ