サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】カルテット・スピリタス クラスコンサート

つながるみる・きく

2024年9月13日(金) 
上田市立本原小学校

松原孝政(ソプラノ・サクソフォン)
波多江史朗(アルト・サクソフォン)
松井宏幸(テナー・サクソフォン)
東涼太(バリトン・サクソフォン)

11月にサントミューゼでリサイタルを開催する、サクソフォン四重奏の「カルテット・スピリタス」。9,10月に上田市内の小学校や公民館でコンサートを行いました。この日は、真田地域の本原小学校を訪問し、5年生38人の前でクラスコンサートを行いました。

演奏しながら一列になって音楽室に入場し、子どもたちの間を練り歩く4人。途中で児童や先生を囲んで音を聴かせる遊びのような場面もあり、さっそく盛り上がります。

4人それぞれ自己紹介をした後、まず演奏したのは、コンサート前の高揚感を表現した『SOON』という曲。弾むようなリズムとメロディーで、子どもたちは興味深そうに演奏を見つめます。

続いては楽器の解説です。「材料の真鍮の上に別の金属を塗ることで吹き心地や出る音が変わるんです。僕たちはそれぞれ、好きな音が出る組み合わせを使っています」というお話の後で、サックスが誕生した時代にメンデルスゾーンが作曲した『紡ぎ歌』を演奏してくれました。軽やかな音色に、糸車がくるくる回る様子が思い浮かびます。

リーダーの松原さんが楽器の構造を解説します。「リードは何の素材でできていると思う?」と尋ねると「角!」「歯!」「アイスの棒!」と子どもたちからさまざまな答えが返ってきます。正解は植物の葦(あし)。震わせることで音が出ますが、単体では音が出ません。マウスピース、ネック、と組み立てながら音を鳴らしていきます。最後に全体が組み上がるときれいな音色が鳴り響き、驚きの声があがりました。

次は曲を料理に見立て、楽器の役割の違いを解説する『音楽レストラン』のコーナー。「楽器はいわば材料。組み合わせることでおいしい料理、つまり演奏になるんです」と、カツ丼を例に挙げて、『大きな栗の木の下で』を演奏しながら説明しました。

カツ丼の材料は、ご飯、トンカツ、卵、玉ねぎです。それぞれ、どの楽器の役割でしょう?

正解は、ご飯=バリトンサックス。具を支える役で、単体で聴くと何の曲か分かりません。トンカツ=ソプラノサックス。主役のメロディーを奏でます。そして卵=テナーサックス。ご飯とトンカツをつなぎます。最後に玉ねぎ=アルトサックス。出汁で煮るとおいしくなるように、メロディーをより豊かにします。

4人で演奏する途中、アルトサックスの波多江さんが他のパートを掻き消すような大きな音で吹くと、松井さんが「これじゃ玉ねぎばかり!」とツッコミを入れます。子どもたちは大爆笑。「伴奏の音が大きすぎると楽しい音楽になりません!」と、料理と共通する『バランスの大切さ』について話しました。

さらに同じ曲を“フランス料理風”“中華料理風”“アメリカン風”と多彩なアレンジで聴かせます。最後の“居酒屋風”はなんと演歌調。松井さんのキャラクターが盛り上げました。

最後に演奏したのはリヴィエ作曲『グラーヴェとプレスト』。「4人の役割、ご飯、トンカツ、卵、玉ねぎとが次々と入れ替わる曲。そこに注目すると面白いですよ」。確かに主役のトンカツとなるメロディー奏者が次々に変わり、艶やかなハーモニーや軽快なリズムなど、聴きどころが満載でした。

子どもたちからは「こんなに近くで演奏を聴けて楽しかった」「楽器それぞれに役割があると分かった」「音楽は嫌いだったけど、今日は少し好きになった」とさまざまな感想が。「私は金管バンドでユーフォニアムを吹いていて、脇役だからいらないと思っていたけど…」という言葉には、「今日聴いてみて、そんなことなかったでしょう? すごく大事な楽器です」とメンバーから温かな言葉。

サクソフォンという楽器の魅力やハーモニーの大切さへの理解が深まるひとときになりました。