【レポート】BLACK BOTTOM BRASS BAND クラスコンサート特別編
2024年9月20日(金)
上田市立川西小学校
毎秋上田にやってくる「BLACK BOTTOM BRASS BAND」(以下、BBBB)が、今年は久しぶりに上田市内の小学校へのアウトリーチ活動を行いました。いつもは5年生が対象のクラスコンサートを、今回は公募に手を挙げた川西小学校の4年生にも、特別編として届けました。
BBBBは結成31年目、日本を代表するニューオーリンズジャズのブラスバンド。トランペット、トロンボーン、テナーサックス、スーザフォン、スネアドラム、ベースドラムの6人編成です。
先生と34人の子どもたちが待つ音楽室に、チャイムの音を合図にBBBBのメンバーが演奏しながら入ってきました。大人しく聴く子どもたちを前に、「ジャズは体全部で遊ぶ音楽なので、まずは準備運動しましょう。手を出して」と声をかけ、みんなで手を振ります。脚、おしり、首と体のいろんなところを動かして、手拍子へ。最初から手加減しないBBBBの演奏が、音楽室を心おどるジャズ色に塗り替えます。

YUTA919 さんが、「みなさん、こんにちは~! 朝からやかましいおじさんたちがやってきました」と挨拶で早速笑いを取り、子どもたちの心をつかみます。まずはみんなに「ジャズ」と口に出してもらいます。「今日はみんなでジャズやってね、遊びながら音楽を楽しむ時間にしたいと思います」と言い、メンバーと楽器の紹介へ。バンドのグルーヴをつくるリズム隊から。“ドキドキ”担当のベースドラムのANTONさん、“ワクワク”担当のスネアドラムのSEIYAさん、そしてノリを生み出すスーザフォンのTAMOTSUさんです。
「グルーヴの説明は難しいけど、手で捕まえられる」というYUTA919さんは、「なるべくめんどくさい感じで手を挙げて」と子どもたちを促します。リズム隊の音楽に合わせて、子どもたちは上手にグルーヴを捉えていました。

テナーサックスのIGGYさん、トロンボーンのYASSYさん、トランペットのYUTA919 さんを紹介して、お祭りの曲『ワッショイ★ブギ』へ。「何をするにもお祭りに行くような楽しい気持ちでやりましょ、という曲です」と言うYASSYさん。子どもたちと「わーっしょい」のコール&レスポンスをはじめます。徐々に「しゅべぼぼぼぼぼぼ~」と怪獣が何かを吐き出すような声に変わると、子どもたちもつられて笑いながらそれぞれに思い切り声を出します。一緒に両手を挙げて「わーっしょい!」と声を出し、ライブ会場さながらの盛り上がりに。子どもたちの顔は心なしかすっきりできた様子です。

YASSYさんがジャズについて話します。「ジャズは120年前、日本が明治時代だった頃にアメリカで生まれました。なぜ生まれたか? 自由がほしい人、喜びや楽しみがほしい人がつくりました。今日はジャズのいちばんおもしろいところをみんなに伝えて帰ろうと思う」。そして、体が自然と揺れ動くようなジャズ独特のリズム「スウィング」の体験が始まりました。
まずは『からだを空っぽにするチャレンジ』から。肩を上下させながらどんどん力を抜いて、「自分の体じゃないくらい」のところまで抜いていきます。床に寝そべり、思い思いの脱力ポーズに。続いて、頭の力を抜いていきます。「何しに来たか分からんくらいでちょうどいい」とYASSYさん。さらに、投げやりだったり、怒ったり、優しかったりと、いろんな感情をこめて「ワンツー、ワンツー」を言ってみます。

力が抜けたところで、曲に合わせてスウィングの動きをやってみます。曲は、川西小学校の校歌をジャズ風にアレンジしたスペシャル・バージョンです。トランペットのメロディは校歌ですが、どこからどう聴いてもジャズ。体をスウィングさせながら、初めて聴くジャジーな校歌にノリノリになります。
次は『Sing, Sing, Sing』で自由遊び。「この部屋の床の上ならどこででも聴いていいことにします」と言うと、子どもたちは散らばり、オルガンと窓の間のわずかな隙間に入る子もいます。間奏中には子どもたちが走り回り、よりカオスに。ベースドラムにそっと触って振動を感じる子の姿も。スネアドラムのソロではみんな自然と寄ってきます。
「スウィングの体になってきたところで、みんなと一緒に一曲つくりたい」とYUTA919さんが言い、8(エイト)ビートを体で表現します。「ドンパーン、ドドパーン」の「ドン」で足を踏み鳴らし、「パーン」で手を叩きます。子どもたちを2組に分け、ANTONさんの指導でドンとパーンをそれぞれやってもらいます。慣れたところで、BBBBの演奏する『I Want You Back』に子どもたちの8ビートのリズムを合わせると、力強い音楽が生まれ、一緒に作った音楽が室内に響きます。


「今日のポイントは一個だけ。体の力を抜くこと。音楽だけじゃない。運動も食事も勉強も、毎日楽しくなるのがいちばん大事やからね」とYUTA919さんが締めくくって、最後は大スウィング大会へ。曲は『聖者の行進』です。曲に合わせて歩き回る子、側転する子、おしくらまんじゅうのように押し合う子など、音楽を自由に体で表現する力を身に着けました。
大きな拍手でBBBBを見送った子どもたちは、楽し気な空気をまとったまま次の授業へと向かいます。ジャズを通して自由に音楽を楽しむ貴重な機会になったようです。
【プログラム】
オリジナル:マーチング
オリジナル:ワッショイ★ブギ
飯沼信義:上田市立川西小学校 校歌
ルイ・プリマ:Sing, Sing, Sing
ザ・コーポレーション:I Want You Back
黒人霊歌:聖者の行進