サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会-2024秋-

みる・きく
開催日
時間
15:00~
会場
サントミューゼ 大ホール

10月20日に開催された「群馬交響楽団(以下、群響)上田定期演奏会-2024秋-」では、ベルギー出身の指揮者、デイヴィッド・レイランド氏と、イギリスのテノール歌手マーク・パドモア氏を招き、「夜」をテーマに4曲が演奏されました。

ヨーロッパを中心に活躍し、現代音楽やあまり知られていない作品の掘り起こしにも熱心なレイランド氏の指揮で、魔法と詩情に満ちた、群響の新しい側面が見られました。

急に冷え込んだ10月下旬の日曜日でしたが、多くのお客様が大ホールに来場しました。

群響メンバーが舞台へ登場します。お客様の期待が込められた拍手に迎えられるレイランド氏は、きびきびとした身のこなしで指揮台へ。

1曲目は氏が得意とするモーツァルトのオペラ『魔笛』から「序曲」です。魔法の世界を感じるこの作品には、フリーメイソンの教義や象徴が盛り込まれているのだとか。群響のハーモニーはマエストロと息がぴったり合い、心地よさを感じます。

弦楽器5部とホルン・ソロが残る舞台に、パドモア氏が登場します。

ベンジャミン・ブリテンの『深紅の花びらは眠りにつく』は日本初演。イギリスの桂冠詩人アルフレッド・テニスンの詩をパドモア氏が歌い始めると、一気に物語の世界に引き込まれます。アンダンテ・トランクィロ―静かに歩く速さでという指示―に、深夜の神秘的な庭園をそっと歩く光景が重なります。

お客様も、パドモア氏の美しく説得力のある歌声に引き込まれていました。

続いては、同じくブリテンの『ノクターン』。
ホルン、クラリネット、フルート、ファゴット、イングリッシュホルン、ハープ、そしてティンパニが加わります。夜そのものを曲のテーマとするノクターン(夜想曲)というタイトル通り、夜の夢の世界へ聴く者を誘います。それぞれ作者が異なる8つの詩が連なり、フィーチャーされる楽器も変わります。詩人の唇の上、深い海、木の葉、真夜中のベル、ベッド、眠る女、夏の風とさまざまなモチーフが時に優しく、時に激しく歌われ、最後はシェイクスピア「目をつぶっているときが、一番よく見える」の、夢に見る愛しい人への切ない思いで締めくくられます。

盛大な拍手に交じって「ブラボー!」の声が上がりました。
パドモア氏とマエストロが手をつないで客席におじぎをすると、拍手の音が大きく響きます。

2回のカーテンコールの後、20分の休憩中は、前半の感想を語り合ったり、ホワイエで販売されているCDを手に取ったりするお客様の姿が見られました。

後半は、リムスキー=コルサコフの交響組曲『シェエラザード』です。
『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』の語り手である女性、シェエラザードの物語で、各楽章にヴァイオリン・ソロとハープによる「シェエラザードのテーマ」が、少しずつ形を変えて顔を出します。

第1楽章「海とシンドバッドの船」は、王、海、船とそれぞれの主題が出てきます。

第2楽章「カランダール王子の物語」は、シェエラザードの主題からファゴットによる低音部へ。トロンボーンの華々しいファンファーレのあと、同じフレーズがさまざまな楽器で繰り返されます。

第3楽章「若い王子と王女」は冒頭、非常に強い印象を残す美しいメロディが弦楽器で奏でられます。特徴的な小太鼓のリズムに乗るクラリネットに、王子と王女が踊る姿が浮かびます。

第4楽章「バグダッドの祭り-海-青銅の騎士のある岸壁での船の難破-結末」。王の主題とシェエラザードの主題が交互に出てきて、総決算のような華やかな展開へ。歯切れのよいトランペット、「熊蜂の飛行」を思わせるヴァイオリンなど、聴きどころもたっぷり。

最後はヴァイオリン独奏でシェエラザードの主題が切なく響き、低音が王の主題を奏でて静かに終わります。

ひときわ大きな「ブラボー!」の声と拍手。群響メンバーが拍手の代わりに踏み鳴らす足音が重なります。 合計4回のカーテンコールでは、立ち上がって拍手するお客様もいらっしゃいました。

感想をお客様に伺いました。

親戚同士で長野市からお越しになった女性は、「サントミューゼには行きたいと思いながらなかなか行けず、今回ようやく来られました。演奏は感動しました。素晴らしかったです!」と感慨深く話してくれました。

続いて、群響の「展覧会の絵」を聴いて感動したという大学生の女性です。「『シェエラザード』はハープ、クラリネット、オーボエ、トロンボーンが特に光っていました。パドモアさんのテノールは、ホルンとの組み合わせが印象的で魅力を感じました」。

友人に誘われて来たという男性は、「『シェエラザード』が印象に残りました」と、久しぶりのクラシック・コンサートを堪能された様子でした。

【プログラム】

モーツァルト:オペラ《魔笛》 序曲

ブリテン:深紅の花びらは眠りにつく

ブリテン:ノクターン 作品60

リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》 作品35 (ヴァイオリン・ソロ:伊藤文乃、群響ソロ・コンサートマスター)