【レポート】カルテット・スピリタス サクソフォン・リサイタル
- 開催日
- 時間
- 14:00~
- 会場
- サントミューゼ 小ホール
ソプラノ、アルト、テナー、バリトンのサクソフォン奏者4人から成る「カルテット・スピリタス」。
クラシックを始めポップス、ジャズなど幅広いレパートリーで愛される彼らのリサイタルには、幅広い年齢層のお客様が訪れました。
聴き覚えのあるメロディーで幕開けです。オペラ「カルメン」から、3つの場面をメドレーで演奏しました。妖艶、静謐、躍動感。4人の音の重なりで魅了します。
この日のプログラムは、音楽の父バッハの時代から脈々と発展した作曲の歴史を辿ります。
前半はフランス音楽。ビゼー作曲「カルメン」に続いて、印象派の幕開けと言われたドビュッシーの作品「ベルガマスク組曲」より前奏曲を演奏します。
「クラシカルな作品と、ドビュッシーらしい色彩豊かな音楽のちょうど境界のような作品です」と、テナー・サクソフォンの松井宏幸さん。
物語の始まりのようなきらめきを感じる音色。4人の楽器が会話をするような部分が印象的でした。
「ドビュッシーの音色が、続くベルノーの音楽につながります。彼の音楽は色彩感があり綺麗な一方、一つひとつの音はかなり変わっているんです」(松井さん)
「現代的な響きもあるので、寝てしまう人もいるかも」とアルト・サクソフォンの波多江史朗さんが笑うと、「安心してください。僕らは起きてますから」と松井さん。客席から笑いが起こりました。
捉えどころのない不思議なリズム、現代的な響きやジャズの趣を感じる部分もありつつ、心躍る部分も随所に。4人の演奏とは思えないほど多層的な響きに驚かされます。前半ラストの盛り上がりは圧巻でした。
休憩を挟み、リサイタル後半はトークコーナーから始まります。
夏と秋に上田市に滞在し、8校の小学校でクラスコンサートを行ったメンバーたち。
学校名を言うと、客席で元気に手を挙げたり拍手を送る子どもたちの姿がありました。クラスコンサートで彼らの音楽に魅かれ、リサイタルにも来てくれたのです。「いたいた!」とメンバーも嬉しそう。
後半はロシア音楽がテーマ。
「アンダンテ・カンタービレ」はチャイコフスキーが故郷を想い、民謡を取り入れた曲。今回編曲を手掛けたバリトン・サクソフォンの東涼太さんも地元の熊本を想って編曲したそう。ロシアの空気をまとう叙情的で美しいメロディーからは、東さんの想いの通り、懐かしさを感じられます。
最後の曲は、チャイコフスキーの系譜を継ぐグラズノフの「サクソフォン四重奏曲」。
コンクールの課題曲にされることが多く、「カルテット・スピリタスも、結成当初に参加したコンクールでこの曲に取り組んだおかげで、グループの基盤を作ることができた」とプログラムノートに綴られています。
「これだけ充実したクラシック・サクソフォンのプログラムを演奏できる機会はなかなかありません。サントミューゼのお客さんが興味を持ってくれるおかげです」(松井さん)
第1楽章はシンプルで洗練された旋律。
最初に提示される主題がリズムやハーモニーを変えて奏でられる第2楽章は、トリルを多用した「シューマン風」や優美な「ショパン風」など、表情豊かに展開します。
第3楽章は舞曲風。喜びと切なさが入り混じる旋律と厚みのあるハーモニーで大団円を迎えました。
大きな拍手に応えてアンコール。
エリック・サティの宵の時間を思わせる美しいメロディーで魅了し、ステージを後にしました。
終演後のサイン会には長い行列ができました。メンバーにクラスコンサートのお礼の手紙を渡す小学生や、サックスを習い始めたと話す子も。
中学生の吹奏楽部グループには、メンバーが「コンクールでどの曲をやるの?頑張って!」「やってみたい曲はあった?」などと気さくに会話していました。彼らの人柄と、音楽に触れる楽しさを教えてくれるひとときでした。
〈プログラム〉
ジョルジュ・ビゼー/伊藤康英 編:カルメン幻想曲
クロード・ドビュッシー/栃尾克樹 編:ベルガマスク組曲より「前奏曲」
アラン・ベルノー:サクソフォン四重奏曲
ピョートル・チャイコフスキー/東涼太 編:アンダンテ・カンタービレ
アレクサンドル・グラズノフ:サクソフォン四重奏曲
〈アンコール〉
エリック・サティ:ジュ・トゥ・ヴ