【レポート】NHK交響楽団 上田特別公演「大河ドラマ&名曲コンサート
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NHK交響楽団 上田特別公演「大河ドラマ&名曲コンサート
- 開催日
- 時間
- 15:00~
- 会場
- サントミューゼ 大ホール
指揮に広上淳一さん、ソリストにヴァイオリニストの三浦文彰さんを迎え、NHK交響楽団(以下、N響)による特別公演が行われました。第1部はNHK大河ドラマの歴代テーマ曲から10曲、第2部は「川」「河」にちなんだクラシックの名曲を4曲届けます。
満席の大ホールに、N響のメンバー、指揮者の広上さんが大きな拍手で迎えられます。1曲目「青天を衝け」は、新1万円札の顔になった実業家・渋沢栄一の生涯を描き、新時代の夜明けを感じさせます。コンサートの幕開けにもふさわしい曲です。
真田の“赤備え”にちなんで赤い衣装に身を包んだ司会の田添アナウンサーが登場して、広上さんとのトークが披露されます。大河ドラマファンでもある広上さんは、「『真田丸』ファンなので上田にはずっと来たくて、今回やっと夢が叶いました」と笑顔で打ち明けます。

大河ドラマのテーマ曲は映像に合わせるため時間の制約が厳しいのだとか。「2分30秒にそれぞれの天才作曲家たちが魂を込めます。秒単位で苦労して調整しながら作曲、演奏しています」と広上さんが明かします。
2,3曲目はいずれも当時広上さんが指揮した曲です。「軍師官兵衛」は馬が駆けていく場面が眼前に浮かぶようでした。「麒麟がくる」は太鼓が非常に印象的でした。
続いては幕末の動乱を描いた「翔ぶが如く」と「篤姫」。前者は大久保利通と西郷隆盛の友情と葛藤を、後者は徳川将軍家に嫁ぎ歴史に翻弄された薩摩藩の姫君を描いています。その違いが曲想に如実に表れていました。
次は、2024年に94歳でなくなった湯浅譲二さんの作品から、「元禄太平記」「草燃える」「徳川慶喜」と3曲続けて演奏します。東京音楽大学で湯浅さんが教えていた頃、広上さんは同大の学生でした。
「優しい先生でした。よく先生の部屋でお茶を飲ませてもらって、『君はどうするの?』『指揮者になりたいんです』『そう、人生を棒に振るの』というやりとりがありました」という茶目っ気たっぷりのエピソードには、客席から笑いが起きます。
湯浅さんの才能が遺憾なく発揮されているのはもちろんのこと、広上さんが「カメレオンのように3曲とも違う」と言う通り、まったく違う作風の3曲でした。

9曲目はご当地テーマ曲の「真田丸」で、ヴァイオリンの三浦さんが登場し、ひときわ大きな拍手が鳴り響きました。「上田は第二のふるさとでしょうか」という田添さんの問いかけに、「本当に久しぶりに上田に戻ってこられて嬉しいです」と答えます。この曲のソロを弾く時に心がけていることについても教えてくれました。「作曲した服部さんがヴァイオリン・コンチェルトのように書いていて、ソロからからはじまる曲というのはとても珍しいです。そのインパクトに加えて、土臭い感じがほしいと要望されたのでそこを意識していました」。

尺八の小湊昭尚さんも加わり、いよいよ演奏へ。何度も聞いたメロディが、生演奏の迫力をもって響きわたります。

前半最後は、現在放映中の「べらぼう」です。ハリウッドで活躍する人気作曲家のジョン・グラムさんが、町人文化が花開いたエネルギッシュな江戸を表現しています。
後半は、三浦さんのソロ・ヴァイオリンでバッハの「ヴァイオリン協奏曲 第1番」からスタート。ドイツ語でバッハは「小川」を意味するのだそうです。小編成のオーケストラとの掛け合い、三浦さんの冴えた演奏にお客様は引き込まれていました。

2曲目はヘンデル作曲の『水上の音楽』から抜粋した4曲です。イギリスの国王ジョージ1世の舟遊びのために書かれたという、なんとも贅沢な曲です。3曲目はヨハン・シュトラウス2世のワルツ「美しき青きドナウ」。踊るような広上さんの指揮からも、ワルツの名曲の高揚感が伝わってきます。
最後は、グローフェ作曲の組曲『ミシシッピ』から「マルディ・グラ」です。ミシシッピ川の河口に位置し、ジャズ発祥の地であるニューオーリンズのパレードの情景が、華やかに賑々しく描かれます。

お客様の感想です。
小3の双子の男の子は、「インドのお祭りみたいで楽しかったです」、「『軍師官兵衛』『青天を衝け』『麒麟がくる』『真田丸』が好きです」と話してくれました。お母様は「ふたりとも歴史が好きで、楽しみに来ました」と教えてくれました。ご家族で安曇野市から来た高校2年生の男性です。「ネットでこのコンサートを知って来ました。『真田丸』がとても良かったです」。友人同士で来られた上田市在住の女性は「素晴らしかったです! 聴き慣れた曲も多くて楽しかったですね。『光る君へ』のテーマ曲も聴きたかったです」と話してくれました。
【プログラム】
NHK大河ドラマテーマ曲
佐藤直紀「青天を衝け」(2021)
菅野祐悟「軍師官兵衛」(2014)
ジョン・グラム「麒麟がくる」(2020)
一柳慧「翔ぶが如く」(1990)
吉俣良「篤姫」(2008)
湯浅譲二「元禄太平記」(1975)
湯浅譲二「草燃える」(1979)
湯浅譲二「徳川慶喜」(1998)
服部隆之「真田丸」(2016)
ジョン・グラム「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(2025)
バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 BWV1041
ヘンデル(ハーティ編):『水上の音楽』から第1,3,4,6曲
J.シュトラウス2世:美しく青きドナウ 作品314
グローフェ:『ミシシッピ組曲』から「マルディ・グラ」
取材・文:くりもときょうこ
撮影:金井真一