【レポート】Altneu[アルトノイ](島地保武+酒井はな) コンテンポラリーダンス公演『いいかえると』
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Altneu[アルトノイ](島地保武+酒井はな)
コンテンポラリーダンス公演『いいかえると』
2021年7月9日(金)19:00~20:00 @サントミューゼ 大スタジオ
「アルトノイ」は、振付家・ダンサーの島地保武さんと舞踊家の酒井はなさんが、2013年に結成したダンスユニットです。島地さんは主にコンテンポラリーダンス、酒井さんはバレエダンサーとしてそれぞれキャリアを積んできました。
今回のダンス公演は、長野県須坂市生まれの島地さんと、池波正太郎が大好きで『真田太平記』を愛読する酒井さんが、過去のガラ公演(特別バレエ公演)で披露したダンスを元に作り上げた一夜限りの上田市限定企画。公演のタイトル「いいかえると」は「In Other Words」を訳したもので、ジャズのスタンダードナンバー「Fly me to the moon」の原題です。
早々に完売となった本公演の客席には、お二人が6月にサントミューゼで行ったワークショップやバレエレッスンに参加した皆さんの姿も見えます。
白と黄の光が落ちる舞台に、シンプルなタンクトップとパンツ姿のふたりが登場し、ピアノ曲の中で踊りはじめます。時にユニゾン、リフトが入りつつ、流れるようなダンスが展開されていきます。やがて無音になった空間には、ふたりの呼吸と足音だけが響きます。
仰向けになって動かない酒井さんと、ピアノ曲に合わせて動く島地さん。「まっすぐって、なかなか難しいんです」と、島地さんの語りがはじまります。
いつの間にか舞台の脇に、白いレオタードにチュチュ姿の酒井さんが。おもむろにストレッチをはじめる様子は、島地さんの語りとあいまって、おかしみが漂います。
島地さんがはけて、酒井さんはサン=サーンスの「白鳥」をトゥシューズで踊ります。一瞬にして舞台を支配する酒井さんのバレエは、アルト(旧)ノイ(新)の“アルト”の表現でしょうか。
今度は、ステージに戻ってきた島地さんが、電子楽器テルミンで「白鳥」を演奏。島地さんの神妙な顔と、手を触れずに音を出すテルミンの不思議な音色のアンバランスさに、会場から笑いが起きます。
うつぶせに寝た酒井さんが起き上がってその場でトゥシューズを脱ぐと、「ここは寝ておると打合せしておったのに、不思議なことあるかやあるかや・・・」と、狂言のようなセリフ回しで、再び島地さんの語りがはじまりました。
酒井さんが再び踊ったあと、ベージュのレオタードと水色のパンツ姿の島地さんがセリフを叫びます。暗転し、同じセリフが男性の音声で流れ、右、左、後と会場の外周をなぞるように動いていきます。
細長く切り取られた光が舞台に浮かび、ピンクのシャツとパンツを着た島地さんがその中をゆっくり歩いていきます。音楽はROTH BART BARON の「けもののなまえ」。
そこに水色の服を着た酒井さんが現われ、四つん這いになった島地さんの背中にそっと立ちます。ゆっくり進んでいく島地さんの上で酒井さんが衣装を脱ぐと、優しいピンク色の上下に。バッハのピアノ曲が流れる中で酒井さんが踊りはじめると、同じ衣装を身に着けた島地さんも合流します。
そして、女性ボーカルの「Fly me to the moon」が。悦びを爆発させるようなふたりの踊りに、会場全体の熱量も上がっていくように感じられました。
最後に島地さんが酒井さんの右腕と右脚をつかみながら回転すると、酒井さんが宙を回ります。ふたりの信頼関係を感じさせるアクロバティックな動きを残して、舞台は暗転。
客席から万雷の拍手が沸き起こります。繰り返されるカーテンコールは、お客様の深い感動の現れのように感じられました。
終演後に、お客様に感想を伺います。
「コンテンポラリーダンス公演は初めて」という長野市から訪れたクラシックファンの男性は、「新鮮で不思議な感覚をおぼえました。きっと人によって、見方によって感じ方が違うんだろうと思います。無音のところと音楽が入るところのギャップが印象的でした」
また、母娘ふたりで来館したお客様は、「大満足です。最後のお二人の踊りを見ていたら、泣けてきました。島地さんと酒井さんのダンスをこの近さで見られる機会はまずないので、貴重な体験でした」と、余韻をかみしめながら話してくれました。
コンテンポラリーダンスとバレエという“新旧”問わず通底する、ダンスの「根源」と「普遍」が余すところなく表現された公演でした。