サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】うえだアーツスタッフアカデミー

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サントミューゼ

うえだアーツスタッフアカデミーの記録映像です。
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3月の終わりに開かれた「中川賢一 ピアノライブ 音の展覧会」には、告知期間わずか2週間かつ平日の夜にもかかわらず、中川さんのファンをはじめ157名ものお客様がつめかけました。

このライブを企画したのが「うえだアーツスタッフアカデミー」の受講生たちです。

「うえだアーツスタッフアカデミー」とは、地域とアートをつなぐ文化リーダーの育成を目的に、「学びと体験の場」として各分野の講師とともにワークショップや講座を行います。
2回目の開講では、(公財)せたがや文化財団音楽事業部の楠瀬寿賀子さんを講師に迎え、6回の講座のなかで音楽事業の企画制作について教わり、ピアニストの中川賢一さんのライブを作ろうという贅沢なプログラムです。

はたして全6回の講座は、どのような内容だったのでしょうか。

 

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第1回 1月28日(木)
「アーツスタッフ入門 コンサートはどのように作られるのか」

 

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初日は講師の楠瀬さんのあいさつから始まり、受講生21名が打ち解けられるようにと自己紹介の時間を設けました。音楽関係に仕事で関わっている人が4人、個人で企画などを経験している人が5人、残りの12人は未経験と企画制作に関する知識はみんなバラバラ。楠瀬さんは「どこを基準に講義を進めようか」と迷いながらも、現在までに手がけてきた音楽事業を例に、企画の立て方、進行スケジュールなどを教えていきました。最後に、コンサートを企画するために大切な5つのポイントを上げました。

1 自分が興味を持ったり、熱中していることを客観的に見てみる
2 地域の有形・無形の文化資産の中に企画の種を見つける
3 演奏家や作品について、自分自身が理解を深める
4 市民参加の企画においても最大限の質をめざす
5 さまざまな形で「伝える」努力をする

 

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初回から密度の濃い内容に、受講生たちは2メモを取るなど真剣に耳を傾けました。

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第2回 1月29日(金)

「ワールド・カフェ」

 

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ワールド・カフェとは、受講生がカフェのような環境で1人ひとりがオープンに話し合う方法です。この日は4つのテーブルに分かれて座り、「上田の文化ってなんだ」をテーマに、サントミューゼを発信源として上田の文化を企画しました。
「1人が話を独占しないようにしましょう。今日は何度か席替えを行います。ハチが花の花粉をつけて受粉するような感じで、アイデアをいろいろな人に届ける、出し合いましょう」と楠瀬さん。受講生は少し恥ずかしそうにしながらも、さほどとまどう様子もなくディスカッションを始めていきました。

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ポストイットや模造紙にはキーワードがどんどん書かれていきます。自然、合唱、農民美術、女性、蚕都、映画のロケ地、気持ちがよい、住みやすい、などなど。そこから出た企画の中には、生活の中の文化度を上げる故試み「NO残業DAYでコンサート」、上田愛を深める、上田市民登場のオリジナル映画「もうひとつの上田城物語」、上田の自然を満喫できる「千本桜で歌う合唱祭」など、興味深い企画が生まれました。

 

 

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第3回 2月3日(水)

「ワークショップ体験&体験を振り返る」

 

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受講生の中にはまだ中川さんの演奏を聴いたことがない人も。そこで前半はピアニスト中川賢一さんに登場いただき、演奏やトーク、ピアノという楽器について知るワークショップを受講生に披露しました。なかには受講生が宿題で描いてきた絵をもとに中川さんが即興演奏をする試みも。自分が描いた絵から音が生まれて行く体験は、おどろきや喜びに満ちていました。
わずか1時間のプログムラムの中には、クラシックやコンサート初心者でも「クラシックと向き合える」工夫がたくさんなされていました。後半ではワークショップを振り返り、1人ずつ感想を発表しました。

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第4回 2月25日(木)

「体験をことばにする」

 

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3月30日のコンサート本番で弾く候補曲を宿題として事前に聴いてきた受講生たち。前半はそれら候補曲の中から気になるもの、もう一度聴いてみたいものを上げてもらい、実際のコンサートと同じ1時間の尺にその場で編集して聴いてみるという体験を行いました。
後半はもう1つ出されていた宿題であるコンサートの体験レポートを元に、「体験をことばにする」訓練を行いました。

「もし自分が2月3日のワークショップの企画者だったら、ちらしを作る時にどんなタイトルとコピーを付けるのか」を考えました。

 

「絵から音が生まれる」「音にさわる・ふれる」「わくわく」「おどろきが目に見える」「親しみやすい」「パッションとエナジー」など、体験した時に感じた言葉を1人ずつ発言。

「WHYピアノ?時空を超えて」「音楽をみつける 中川さんと一緒に音楽を探そう」「音を味わうワークショップ」「あなたの知らないピアノの世界 ピアニストの雄叫び」「中川賢一の音つむぎ」などが上げられました。

 

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第5回 3月2日(水)

「プログラムを考える」

 

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4つのグループに分かれて、3月30日のコンサートで披露するプログラムを考えました。その中で中川さんからいくつかの提案がありました。

 

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・第1曲目はムソルグスキー組曲『展覧会の絵』より「プロムナード」を入れる
・最終曲はムソルグスキー組曲『展覧会の絵』より「キエフの大門」を入れる
・スティーブ・ライヒ「ピアノフェイズ」・プロコフィエフの歌劇『3つのオレンジへの恋』より「行進曲」は合間に入れる(順番はどこでもOK)

 

上記項目を核に、作曲家の年代や曲から連想されるものを上げていきながら、どこにMCをはさむか、中だるみしない工夫、即興は何をするのかなどアイデアがどんどん生まれていきました。

 

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第6回 3月3日(木)

「広報宣伝を考える」

 

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第5回に受講生から出された4つのプログラム案から、「音の展覧会」を企画コンセプトにした案が採用されました。中川さんからは「とてもシンプルな構成であるが、曲の流れがとても良かった」と評価されました。

 

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決定した「音の展覧会」というコンセプトをもとに、事前に準備された9パターンのちらし案と照らし合わせて、コンサートタイトルとコピーを検討しました。最終的に「中川賢一ピアノライブ 音の展覧会」に決定。そのほかちらし案の中からは、ガーランドのイラストがたくさん描かれたポップなものが採用されました。

 

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「ぱっと見てピアノのコンサートだと分かるようにした」「デザインからクラシックに疎い人でも興味が持てるような気軽さがあるものにした」などの意見がまとめられたものになりました。

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本番 3月30日(水)

「中川賢一 ピアノライブ」

 

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6回の講座を終えて、受講生が作り出したライブは次のようになりました。

「中川賢一 ピアノライブ 音の展覧会」

≪プログラム≫
ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』より「プロムナード」
ドビュッシー:ベルガマスク組曲より第3曲「月の光」
ラヴェル:水の戯れ
武満徹:雨の樹 素描Ⅰ
メシアン:前奏曲より 第1番「鳩」
中川賢一:即興曲~上田の風景をテーマに~
スティーブ・ライヒ:「ピアノ・フェイズ」
プロコフィエフ:組曲『第3のオレンジへの恋』より「行進曲」
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番「戦争ソナタ」より第3楽章
ラフマニノフ:前奏曲 嬰ハ単調 Op.3-2「鐘」
ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』より「キエフの大門」
アンコール曲
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ

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このプログラムを企画したチームのひとりは、「中川さんから必ず入れてほしいと言われていたスティーブ・ライヒやプロコフィエフは、核であり、中心になると考えました。そこで真ん中に構成してみました」と想いを語りました。

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中川さんからは、

「自分では考えない、独創的なプログラムでした。例えばライヒを後半に持ってくることが多いのですが、前半ラヴェルから武満さんの曲で気持ちよく音楽に開放された後に重たいテーマを持って来るなど、おもしろいなと感じました。新しい発見がたくさんありました」

 

と、聴きやすいだけではなく、クラシックを追求したくなるプログラムに大満足の様子でした。

 

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音楽事業の企画制作について学ぶ全6回の講座とコンサートが終了しました。

 

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楠瀬さんが大切にしているいかに『伝える』かを考えていく技術は、企画制作にとどまらず日常生活でも役立ちます。約2カ月という短い期間の中でコンサートを作り上げた自信は、受講生の糧になったことでしょう。