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パスカル・ヴェロ アナリーゼワークショップVol.20 

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サントミューゼ

仙台フィルハーモニー管弦楽団 上田公演 関連プログラム
アナリーゼワークショップVol.20 
お話:パスカル・ヴェロ(仙台フィル常任指揮者)
通訳:菊池万希子
3月10日(土) 14:00~ at サントミューゼ小ホール
3月18日(日)に開催される「仙台フィルハーモニー管弦楽団 上田公演」を前に、プログラムの中のひとつ、ヴァンサン・ダンディ「フランスの山人の歌による交響曲 作品25」について、指揮者パスカル・ヴェロ氏によるアナリーゼワークショップが行われました。
ヴェロさんは絵画からインスピレーションを得て、音楽を構築していく方法をとっているといいます。

 

そこで今回のワークショップではテーマ曲であるヴァンサン・ダンディの『フランスの山人の歌による交響曲 作品25』を読み解くヒントとして、フランスの画家モーリス・ドニの絵を用いて解説してくれました。

 

 

裕福な家庭で育ったモーリス・ドニは画家であると同時に音楽的才能をもった著述家でもあります。信仰心厚く、教会の壁やステンドグラスに宗教的な絵が多く残されています。
一方、貴族家系の出身であるダンディは作曲家としてだけでなく、指導者としても活躍しました。今回は師であるセザール・フランクの曲も使い、その影響も探ります。

 

 

 

スクリーンにはヴァンサン・ダンディとモーリス・ドニのポートレート。
「ダンディがドニの絵から何か着想を得たというわけではありません。

私もモーリス・ドニという画家のことをよく知っていたわけではありませんが、いい機会なので取り上げてみました」とマエストロ。

 

今回の楽曲ではドニのほか、ドニが所属していたナビ派の画家の絵画なども見て想像力をかき立てたといいます。
ダンディの『フランスの山人の歌による交響曲 作品25』に共通する要素を持つ絵を選んだというマエストロ。

まずスクリーンに映し出されたのはイングリッシュホルンを持った狩人の絵です。第1楽章の冒頭部分にこの楽器をイメージした音が使われているといいます。

実際に該当数部分の曲を聴きながら絵を鑑賞します。

 


「オーボエよりも低い音を出すコール・アングレで演奏されたメロディは、テーマとして交響曲全体を通して登場する旋律です。

コール・アングレで演奏するときはもの悲しいイメージになるのに対して、フルートの部分は明るいなど、楽器によってコントラストが生まれるようなつくりになっています。

同じテーマを弾いているのに色合いがまったく違うことを感じていただけるのではないでしょうか」

半音階を使った伴奏部分が絵の色彩の濃淡に見て取れるといいます。

 

そして第1楽章の最後に再びこのテーマが登場します。
「シンフォニーの終わりは楽譜の並びがまるで木のように見えます」と手元の楽譜をスクリーンに映し、絵に描かれた木立との共通点を示します。

そして長調、短調と繰り返す音の響きが、絵の中の影と光にリンクするといいます。

 

 

第2楽章は、ピアノとオーケストラの対話から始まります。

ピアノが終わるとオーケストラが。オーケストラが終わるとピアノが奏でだすと、まるで会話のよう。
ドニの絵も音楽と同じく会話をしている女性たちの絵です。
ここでフランクの『交響的変奏曲 嬰ヘ短調 作品46』と聴き比べてみます。
全編にわたってテーマを循環させる、半音階を多用するなど、師匠であるフランクの影響を音から感じ取ることができました。
次はみんなで手を取り合ってフォークダンスを踊っているような『ファランドール』という絵です。色から半音階的な要素が感じられます。

 

「第3楽章は動きの速い曲で、テーマがより強調されています。

次々と奏でられる楽器に絵と同じようにみんなが手を取り合っているようなイメージを持ちました」

フルート、オーボエ、クラリネットなど、オーケストラに波及していくリズム。

喜びの音の中にも半音階が効いていました。

 

 

楽譜を絵画のように俯瞰することはあまりないですが、音符の並びはまるで絵のようだといいます。
1つのテーマを音階、楽器、曲調といろいろなバリエーションで展開する曲。
音符の縦のラインは宗教画の柱や聖壇。そして森の木立。

色の濃淡は半音階で、おしゃべりはピアノとオーケストラの対話、影と光は長調と短調。

取り合う手や流れるようなリボンはつながって流れるテーマとして見ることができます。
絵からインスピレーションを受ける音楽の聴き方、絵画の中に音楽の要素を感じる絵の見方など、楽しみ方などが広がるワークショップとなりました。

 

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