サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】新国立劇場バレエ団 白鳥の湖<新制作>

みる・きく
会場
サントミューゼ

 

新国立劇場バレエ団 白鳥の湖<新制作>

11月7日(日)14:00~

 

 

 

 

新国立劇場バレエ団によるピーター・ライト版『白鳥の湖』が、サントミューゼ大ホールで上演されました。開場直後から多くのお客様がホールを訪れ、あちこちからバレエ談義が聞こえてきます。その熱量の高さに、本公演に対する期待値の高さが伺えました。

バレエ作品の古典であり、高い人気を誇る『白鳥の湖』は、過去にも多くの演出家が、様々な手法や解釈で演出し上演してきました。今回サントミューゼで上演された作品は、1981年初演のピーター・ライト(振付家/演出家)版『白鳥の湖』を、舞踊芸術監督就任2期目の吉田都さんが新シーズン第1弾として新制作したものです。

 

白鳥に姿を変えられたオデットを見初めたジークフリード王子の前に現れる、オデットと瓜二つのオディール。ロットバルト男爵の罠とも知らずに王子はオディールに永遠の愛を誓ってしまい・・・。

黒づくめの衣装を身につけた人々が、舞台上を荘厳な空気をもって横切っていく、葬列のシーンから始まる本作。悲劇の幕開けを感じずにはいられない印象的な場面です。王子の孤独。オデットと白鳥たちの美しさ。オディールの闇。ロットバルト男爵の悪。登場人物それぞれの心情が、物語を恋愛悲劇だけにとどまらない厚みのある劇へと高めていきます。見る側の気持ちをくすぐる構成と愛すべきキャラクター造形が出来るのは、長年愛され続けている作品だからこそ。丈夫な骨格を持った名作には、演出や振り付けのバリエーションに無限の可能性を引き出す深みがあります。

 

 

 

オデット/オディール(一人二役)の米沢唯さんはひときわ目を引く存在で、登場した瞬間、舞台には人ではなく、一羽の白鳥がいるように見えます。

 

 

 

華奢で美しい白鳥が、王子の前で飛び回る姿は限りなく可憐で、清きオデットと悪のオディールという真逆の役を、身体の使い方はもちろん目つきや表情も駆使して演じ分けます。

 

 

 

 

冨田実里さん指揮「東京フィルハーモニー交響楽団」の演奏は、時にオデットの悲しい鳴き声となり、時にジークフリード王子の孤独を代弁する言葉となります。音楽で語りかけてくる物語に身を委ねる3時間となりました。

ジークフリード王子役の福岡雄大さん、ロットバルト男爵役の中家正博さんは、それぞれの持ち味を発揮し観客を魅了。重厚で奥行きのある舞台美術も大きな見どころです。

 

 

終演後、カーテンコールは10分近くも続きます。スタンディングオベーションで作品に対する敬意を払う観客とそれに応えるキャストが、サントミューゼの大ホールがひとつになります。寸分の妥協も感じることのない完璧な作品は、この先もずっと語り継がれることでしょう。

 

撮影:鹿摩隆司