【レポート】宮本妥子 マリンバ&打楽器コンサート
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あなたの心を旅する打楽器アンサンブル
宮本妥子 打楽器&マリンバコンサート
2017年3月22日(水)19:00開演 at 小ホール
一般市民が参加し、音楽事業の企画や運営に焦点をあてて、地域とアートをつなぐアートスタッフのための講座「うえだアーツスタッフアカデミー」で企画・運営したこのコンサート。
開催日の数日前には完売となり、来場した観客からは
「市内の図書館に出かけた時に、ぱっと鮮やかな黄色が際立つこのコンサートのチラシに惹かれて手に取った」
「私も現在打楽器を演奏しているので」
など、アカデミー受講生が作ったチラシや打楽器のみのコンサートという点に興味を抱いた人が多く見受けられました。
暗くなった会場で突然鳴り響く打楽器の音。
その行方を探しながら目を後ろに向けると、パーカッション・マリンバ奏者の宮本妥子さんと後藤ゆり子さんが左右の通路に分かれてステージへと進み、シュミットの「ガナイヤ」を演奏。
うす暗い会場のあちこちにマリンバとジャンベの音が広がっていくような感覚は、まるで森の中でそよぐ木々と風のようです。
挨拶をはさんで2曲目の使用楽器となるマリンバの先祖・バラフォンという楽器紹介へ。
マリンバの音を響かせる役割がある共鳴管の代わりにひょうたんが使われているなど、先人の知恵と工夫を楽器から垣間みることができました。
このバラフォン1台をはさんで宮本さんと後藤さんが向かい合って座り、ライヒの「マリンバフェイズ」を演奏。わずか5音のみで構成された曲は、ひたすらくり返し同じリズムで音が進んでいきます。まるでプログラミングされたかのような緻密な音なのに、それが実際は人間の手で演奏されているという面白さなどが感じられました。
つづいて演奏したのは宮本さん作曲の「シュラーク」です。
2曲目を静的と例えるなら、動的で打楽器の力強い音を存分に楽しめる作品でした。
2人の圧倒的なパフォーマンスに会場からは少し感嘆の息を洩らしながら拍手が生まれる中、次にステージに登場したのは逆さに配置された6つのバケツです。
4曲目は「これも打楽器?」をテーマにアルゲンティアーノの「スティンキン ガッベージ」を披露。
リズミカルに、時に早く演奏する様子はパフォーマンスとしても十分楽しめる内容でした。
「お待たせしました。ボディパでGO!の時間です~」と後藤さん。
観客とともに演奏を楽しみたいという2人のアイデアから、会場にいる人たちの足音や手を叩く音、ささやきを使って即興するというもの。
いざ体を動かそうとテンポを揃えながら手足、声を出してみるものの、なかなかうまく行きません。
そう考えると、2人がマリンバのマレットを複数本持って演奏する技術がいかにすごいことか。
図らずもそんなことを感じる瞬間でしたが、観客のボディパフォーマンス部分が前奏となり、つづけて「旅する音」をテーマに太郎山や逆さ霧をイメージした3曲、中村典子さんの「ホカヒ」、ヴィヴァルディの四季より「冬」(編曲は後藤さん)、おぼろ月夜を演奏しました。
なかでも「ホカヒ」は仏具のおりんが使われていて、丸みがあるやわらかな響きはホール中に埋め尽くされるようでした。
今まで知らなかったさまざまな打楽器の音色にたくさん出合えた1時間。
その最後には、宮本さんが大好きだというトレヴィノの「キャッチング・シャドウズ」、アンコールには「故郷」を演奏して幕を閉じました。
終演後の会場では大満足の表情でホールを後にするお客様の姿が見受けられました。
何人かに感想を求めると、
「1時間のプログラムだったけれど、2時間のコンサートを聴いたような内容でした」
「こんなにも打楽器に種類があり、表現ができることにおどろいた」
「タイトルどおり、音の旅をしたような気分でした」
など、皆さんうれしそうに話してくれました。
なんとなくでしか知らなかった打楽器の未知なる世界を見た、そんな驚きや喜びがひしひしと伝わってきました。
「うえだアーツスタッフアカデミー」講師の楠瀬寿賀子さん、12人の受講生、そしてアーティストの宮本妥子さんと後藤ゆり子さんみんながひとつになって良いコンサートを作ろうとがんばった集大成が、訪れた人たちにもしっかりと届いたのではないのでしょうか。