【レポート】マチ×マチフェスティバル
- 会場
- サントミューゼ
10/8(土)・9(日)・10(祝・月)
マチ×マチ フェスティバル
秋の3連休に上田市の街なかで初開催された『マチ×マチ フェスティバル』。「まちがアートを待っている アートがまちに出かけていく」をテーマに、さまざまなミュージシャンが上田市の施設や駅前広場など普段演奏するコンサートホールではない場所に出向き、上田市民や観光客に気軽にプロの音楽を楽しんでもらおうという趣旨のもと開かれました。
開催場所は、海野町商店街のシェアオフィス「HanaLab.UNNO」と、民営の文化施設「犀の角」をはじめ、上田駅前お城口水車前広場を拠点に、サントミューゼ大ホール、信州国際音楽村ホールこだまの5カ所で、10組のアーティストが3日間、趣向を凝らしながらタイムスケジュールに沿ってコンサートをしました。
今回はそのうちの3組のアーティストのコンサートの様子を紹介しましょう。
■BLACK BOTTOM BRASS BAND
プログラム:
上田駅前お城口水車前広場
1.グローリーグローリー
2.PARAISO!
3.ワッショイブギ
4.聖者の行進
HanaLab.UNNO
1.ロイヤルガーデンブルース
2.ストロベリーダンスアワー
3.ワッショイブギ
4.Mr.ジョーロのテーマ
5.natsu hanabi
6.IKO IKO
アンコール:スノーボール~聖者の行進
8日に出演したBLACK BOTTOM BRASS BANDは、フェスティバルのはじまりを知らせるかのように上田駅前の水車前広場で20分ほどのストリートライブを披露。
すでにファンが広場で待つ中、ブラスバンドならではの大人数による迫力ある音と豊かなハーモニーで、「グローリーグローリー」を演奏しながら登場。
一人ひとりと交流するかのように近づいたり、アイコンタクトを取り、観客はドキドキ、ワクワクした雰囲気の中手拍子をしながら迎えました。
「ワッショイブギ」では、YASSYさんの「わっしょいわっしょい!」というかけ声に合わせて、観客は神輿を空高く担ぐように手をあげてコール&レスポンス。
最初は恥ずかしそうにしている人も、広場にいるみんなで体を動かし、声を出していくうちに、全員で1つの曲を生み出しているような連帯感が生まれました。
最後は全員立ち上がって大きな木の下まで「聖者の行進」に合わせて移動して終了。屋外ならではの開放感かつフリーライブという良い意味でのゆるさがより相乗効果を高めているようでした。
その後は会場を「HanaLab.UNNO」へと移し、長屋のように細長く、音が響き渡る空間で大音量を響かせながら2度目のライブ。
水車前広場につづいて楽しむ人はもちろん、屋外ライブを聴けなかった人、室内で座りながらじっくり楽しみたいという人たちなどたくさんの観客が集まりました。
演奏曲も内容を変えて7曲を演奏。
「音楽を一緒に楽しもう」とストレートに演奏で訴えかけるメンバーたちのパワフルな世界に包まれ、観客はとても楽しそう。
「このフェスティバルで、音楽と場所の両方を楽しんでください!」というYASSYさんの言葉どおり、その場所の、空間の魅力を感じながら、その場所を最大限引き立てるプロの演奏を楽しむ。
気軽に参加できながらも、日常とは少し異なる時間が感じられました。
■田中靖人
プログラム:
モンティ:チャルダッシュ
ミヨー:スカラムーシュ第1楽章
ビゼー:「アルルの女」第二組曲より間奏曲
真島俊夫編曲:モリコーネパラダイス
真島俊夫編曲:ガーシュウインカクテル
シークレット・ガーデン:ユー・レイズ・ミー・アップ
9日に登場したのは、サクソフォン奏者の田中靖人さん。
端正な顔立ちに情感豊かに奏でる音色に、高校生をはじめ多くの人の心を捉えているアーティストです。
この日はピアニストの成田良子さんとともに出演。
哀愁を帯びた曲調から一転して軽快なリズムに転じるモンティ作曲「チャルダッシュ」から披露しました。
上田市に訪れるのは13回目だという田中さんも、会場となる「HanaLab.UNNO」は初めて訪れたそうで、「珍しいスペース」だとおどろく場面もあり、アーティスト自身も普段コンサートをする会場とは異なる環境を楽しんでいる様子が伺えます。
つづいて「スカラムーシュ」は3つの楽章からなり、演奏した第一楽章は特にアップテンポで音の変化が楽しめる曲。
その後は田中さんが大好きなエンニオ・モリコーネのさまざまな映画音楽をセレクトしてまとめた「モリコーネパラダイス」などを演奏。
トークでは、もとはジャズプレイヤーを夢見て、JAZZと大きく書かれたTシャツを着ていた少年時代の話などを盛り込みながら和やかに進みました。
何度訪れても上田市民の皆さんは優しいという印象がつづいているという田中さん。
街なかでのフェスティバルを通じて、その印象はより強くなった様子でした。
■カルテット・スピリタス
この他にも、メンバー全員上田で生まれ育った「THE KITCHENS」、再復活した「blissed」、現役医師デュオの「Insheart」、情熱的なピアノ弾き語りのせきぐちゆきさん、トークも楽しい神戸のアカペラグループ「Chicken Garlic Steak」、ギター1本で熱い想いを届けた草野仁さんも3日間のフェスティバルを大いに盛り上げてくれました。
また最終日には、サントミューゼ大ホールを会場に、スペシャルゲストとして人気レゲエグループ「湘南乃風」の若旦那が登場。会場にはファンも詰めかけ、大きな声援が寄せられました。
「今日は友達の結婚式だから、愛の歌を」と始まったのは、湘南乃風の名曲「純恋歌」のアコースティックバージョン。伸びやかな歌声でステージを歩き回り、最前列まで近寄るパフォーマンスに、客席は早くも大盛り上がりです。
「“自分が夢中になれる大切なものが、みんなに見つかりますように”って願いながら、毎日歌ってるよ」
全身で訴えかけるアカペラや、力強い中に哀しさが宿るバラード。歌はもちろん、一人ひとりに語りかけるような熱いトークも胸を打ちます。
最後の曲「愛してる」では、子どもからお年寄りまで客席総立ちで手を振り声を合わせ、空間が一体に。「今日帰ったら、この言葉を大切な人に言ってね」、そう話す笑顔がとても印象的でした。
初開催の「まちまちフェスティバル」が、観客の心に温かな余韻を残して終了しました。
いつもの街がガラリと変わってみえたり、この街の新たな魅力に気がついたり、もっと音楽に興味を持てる瞬間がたくさんあったり。
多様な楽しみに満ちたフェスティバルでした。