サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

JA

【レポート】神谷未穂・望月優芽子 アーティスト・イン・レジデンス

体験する
会場
サントミューゼ

【レポート】神谷未穂・望月優芽子 アーティスト・イン・レジデンス
クラスコンサート at 塩川小学校
2018年2月22日(木)

 

2018年のレジデントアーティストとして、上田に滞在しながら音楽活動を行っているヴァイオリニストの神谷未穂さん。
この日は塩川小学校を訪れ、5年生の児童たちの前でクラスコンサートを行いました。

ピアニストの望月優芽子さんと二人で登場し、最初に演奏したのは「愛のあいさつ」。
生徒たちの間近で演奏し、デュオの美しい音色を響かせます。

 

 

さらに楽器の特徴を分かりやすく解説。
ピアノで「ド」と「レ」の間にあるのは「ド#」の1音だけですが、
「ヴァイオリンは、ドとレの間にいくつの音がありますか?」
そう問いかけながらドからレへ音を上げていくと、その途中には無数の音が聞こえます。
「30個?」「100個?」と戸惑いつつ答える生徒たちに、
「正解は……“分からない”です!実は、弾いている私も分かりません」

 

 

声のように細かく自在に音程を変えるヴァイオリンで鳥のさえずりを表現した曲「ひばり」では、児童たちが神谷さんの手元にじっと見入ります。

 

 

 

 

続いて望月さんのピアノ解説コーナーです。
「鍵盤を弾くと、ピアノ内部のハンマーが弦を叩いて音が出ます。

このハンマーは、ある動物3頭分の毛を使って作られていますが、ウサギ、ヒツジ、シロクマのうちどれでしょう?」

と3択クイズ。

 


シロクマと答えた生徒が多かったですが、正解はヒツジ。
セーターと同じウール素材をぎゅっと固めて作っているそうです。

最後は児童たちの歌とともに校歌を演奏し、充実のクラスコンサートを終えました。

 

 


クラスコンサート at 丸子北小学校
2月23日(金)

 

この日は丸子北小学校5年2組のクラスコンサート。

ヴァイオリンを弾く上で大切な3つのことを、児童たちに伝授してくれた神谷さん。
「一つ目は姿勢。二つ目は力を入れないこと。そして三つ目、“こういう音を出したい”と想像すること。

これが一番大切かもしれません。

サッカーやバスケットボールで“この角度でシュートしよう”とイメージすればゴールしやすいのと同じです」

ヴァイオリン体験コーナーでは、代表の児童が演奏に挑戦してくれました。

 


「リラックスしてるね」と神谷さんが感心するほど堂々とした様子で音を出し、神谷さん、望月さんとともにベートーヴェンの「交響曲第9番」の一節を演奏。
生徒や先生たちから大きな拍手が起き、挑戦した本人も「楽しかった」と嬉しそうです。

 

 

望月さんのピアノソロ「子犬のワルツ」は、演奏前に作曲者ショパンがイメージの元にしたものを紹介してくれました。
「子犬が自分のしっぽを追いかけてくるくる回る様子です。その様子がピアノの右手で奏でられますので、想像しながら聴いてください」


なめらかな手の動きと美しく軽快な旋律に、じっと耳と目を傾ける生徒たち。

情景をイメージして聴く面白さを教えてくれました。

 

 


丸子文化会館 ワンコイン地域ふれあいコンサート
2月24日(土)

 

500円で気軽に楽しめるワンコインコンサート。
土曜日の開催とあって地域の方はもちろん、これまでクラスコンサートで神谷さんらの演奏に触れた小学校の子どもたちもたくさん訪れています。

 

 

最初にステージに現れたのは望月さん一人。
ピアノで弾き始めたのは、クラスコンサートでもおなじみの「愛のあいさつ」です。
1フレーズ終えたところで、後方から美しいヴァイオリンの音色が。
振り返ると神谷さんが後方から登場し、演奏しながら客席の間を歩いてきます。
時にはお客様の目線まで楽器を近づけたりと遊び心に満ちた演出で、間近で聴く音色に魅せられた表情のお客様も。

 

 

会場全体が温かな雰囲気に包まれました。

 

「この曲は小学校のクラスコンサートで必ず演奏しています。

子どもたちにヴァイオリンの弓が当たるんじゃないか、息遣いが聞こえるんじゃないかというぐらい、近くに行って演奏していて。

ヴァイオリンを初めて見る子どもさんも多いので、楽器をよく見てほしいなと思って選んでいます」
と神谷さん。

続いては、バレエファンであるお二人ならではの曲「剣の舞」。
情熱的で躍動感あふれるピアノとヴァイオリンとの調和が心地よく、一気に引き込まれます。
曲中には、ヴァイオリンの弦を指で弾いたり弓で叩いて激しい音を表現したりといった演奏もあり、聴きながら思わず「すごい」と声を漏らすお客様も。

 

 

 

ワルツが多めのこの日のプログラム。

続いてはチャイコフスキーです。
「チャイコフスキーと言えばバレエ音楽。

演奏していると、バレエの一場面を見ているかのような気持ちになります」
と演奏した「ワルツスケルツォ Op.34」は、目の前にバレエダンサーの優雅な舞のシーンが立ち現れるよう。
音の質感や響き、ボリューム感など、ヴァイオリンが持つ多彩な表情をあますことなく見せてくれました。

 

 

 

ショパンの「子犬のワルツ」は左手でワルツのリズム、右手で子犬がくるくると回る様子を軽やかに演奏。
さらに「フランス音楽は、音楽なのに不思議と香りがするんです」と神谷さんが話したとおり、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ 第6番」の憂いのある旋律からは、不思議な香りが伝わってくるかのようでした。

 

最後はベルギーの作曲家、フランクの「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」。
「結婚祝いで作られた曲ながら、悲しみや辛さも描かれたこの曲は、人生を表しているかのようです」
と神谷さん。
魂を宿した美しい音色、情熱、緊張感や絶望……。

さまざまな思いを乗せ、ヴァイオリンと一体となって音を奏でる神谷さんの姿が印象的でした。

 

 

終演後にはロビーでサイン会を開催し、笑顔でお客様をお見送りしたお二人。

 


学校のクラスコンサートで演奏を見て、「絶対に聴きに来たい」とお母さんと一緒に訪れた小学生の女の子や、「こんな身近な場所で聴かせてもらえて本当に嬉しい」と話す近隣の女性など、多くのお客様が笑顔で会場を後にしていました。