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【レポート】神谷未穂・望月優芽子 アーティスト・イン・レジデンス西部地域

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サントミューゼ

芸術家ふれあい事業
神谷未穂・望月優芽子 クラスコンサート at 塩尻小学校
11月9日(木)

 

 

11月の7日から11日まで上田市内に滞在し、レジデンス活動を行ったヴァイオリニストの神谷未穂さんと、ピアニストの望月優芽子さん。
2015年以来のアーティスト・イン・レジデンスとなる神谷さんは、仙台フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター。

上田のみならず、全国各地での演奏やアウトリーチ活動の実績があることでも知られています。
この日は塩尻小学校の5年1組の授業で、クラスコンサートを開催しました。

 

にぎやかだった子どもたちですが、音楽室に現れた二人が「愛のあいさつ」の美しい音色を奏で始めると一瞬で口をつぐみ、じっと演奏に見入ります。
そんな子どもたちの顔の近くにヴァイオリンを寄せ、音を体感させてくれた神谷さん。
照れ笑いが起き、少し空気が緩みます。

 

 

大きく朗らかな声で、ヴァイオリンの構成や音が出る仕組みを語りかける神谷さん。
「ヴァイオリンは木でできていて、中は空洞です。

近くで音を出すから見ていてね。

弦はどうなってる?」
と話しかけると、「弦が揺れてた!」と元気な声。

この振動が弦を支える「駒」という部品に伝わり、本体の内部で音を響かせる仕組みを解説してくれました。

 

そして「特別に弓を分解してみます」と弓のネジを緩めると、ぴんと張っていた白い弓がふさふさとなびき、子どもたちからは驚きの声が。

 


「これは馬のしっぽの毛。

激しい曲を演奏すると、2、3本切れちゃうんです。

2、3カ月に一度、取り替えるんですよ」

さらにヴァイオリンを使ったユニークな「おしゃべりクイズ」も。
「キュキュキュキューキュ」と、まるで人の話し声のように奏でる音色に

「なんて言ってるんだ!?」と戸惑う子どもたち。

ヒントを出しながら、答えを聞いていくと、正解は「おなかすいた」。

人の声のように自在に変化する音階の音色に、ヴァイオリンに親しみが湧いてきました。

 

ここで「ヴァイオリンを弾いてみたい人?」と神谷さんが尋ねると、半分以上の子どもたちが「弾きたい!」と立候補。

 

 

じゃんけんの結果、2人の児童が選ばれました。

 

「私が演奏で大切にしていることは3つ。

姿勢、リラックス、そして音を想像して弾くことです」

 

神谷さん指導のもと、子どもたちも先生たちも、「エア・ヴァイオリン」で演奏姿勢に挑戦です。

代表の二人の児童は実際に楽器を持ち、初めての演奏にトライ。

 

 

最初こそ神谷さんの手を借りていたものの、一人で演奏する音色は堂々としたもの。

何より、音が出た時の嬉しそうで誇らしそうな表情が印象的でした。

 

 

続いて、望月さんがピアノの成り立ちを解説する時間がスタート。
ピアノは「鍵盤楽器」と思いがちですが、正確には「有鍵打弦楽器」。

 

つまり鍵盤楽器であり打楽器であり、さらに弦楽器でもあるのだそう。

その理由は、ピアノの音の仕組みにあります。

 

 

 

鍵盤を弾くと内部のハンマーが立ち上がって弦を打ち、音が出る。

その仕組みを、望月さんが模型を使って説明してくれました。

 

 

ピアノの音を大きく響かせるのが、内部で共鳴させる「響板」です。

その力を試す実験として、取り出したのは小さなオルゴール。

 

手のひらで鳴らすと小さく優しい音色ですが、響板の上に置いて鳴らしてみると、信じられないほど大きく響き始めました。

 

 

 

 

あまりの変化に、子どもたちからは「違うオルゴールじゃないの!?」と声が漏れたほど。

ピアノの音がどのように生まれ、広いホールで響いていくのかを体感することができました。

 

 

もう一度神谷さんが登場し、二人で演奏したのは「チャールダーシュ」。

 

歌うように哀愁漂うメロディーで始まりながら、テンポが急激に速くなる場面では驚いて顔を見合わせる子どもたちも。
表情豊かな演奏に拍手は鳴り止まず、アンコールとして神谷さんたちが提案したのは、子どもたちの歌と演奏のコラボレーションです。

曲は、いつも子どもたちが練習している合唱曲「With You Smile」。

伸びやかな歌のハーモニーを主役に、神谷さんと望月さんの美しい音色で引き立てます。

音楽室が歌声と楽器の音色で満たされました。

 

 

 

神谷さんは、2018年3月9日(金)にサントミューゼ小ホールでヴァイオリンリサイタルを開催。

ピアノ演奏は望月さんです。

少し早い春の訪れを、ヴァイオリンとピアノの音色で感じてみてはいかがでしょうか。