サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

JA

【レポート】神谷未穂 ヴァイオリンリサイタル

みる・きく
会場
サントミューゼ

神谷未穂 ヴァイオリンリサイタル
2018年3月9日(金) at 小ホール

 

黒いドレスに身を包んだヴァイオリニストの神谷未穂さんと、ピアニストの望月優芽子さんが拍手に包まれながら登場。

18世紀にフランスで活躍した作曲家ルクレールのヴァイオリン・ソナタ より <タンブーラン>から演奏をスタート。

タンバリンの起源となった太鼓・タンブーラに合わせて踊る舞曲で、そのリズミカルな演奏は開演を待っていた観客の心の鼓動とリンクするような楽しい楽章でした。

 

 

1曲目を終えて2人が挨拶。

「何度も訪れている上田なので『ただいま』という感覚です」と話すと、会場からはそれに応えるように拍手がわき起こりました。
つづいて演奏するラヴェルもフランスを代表する作曲家の1人ですが、

「フランスの音楽は色彩が豊かで香ってくるような作品が多くて素敵です」と神谷さん。

3月18日の仙台フィルハーモニーオーケストラ公演でも高雅で感傷的なワルツより 第6曲を演奏しましたが、この日はヴァイオリンとピアノのバージョンを披露しました。

 


前半のメインは、フランクのヴァイオリンとピアノのためのソナタを演奏。

ヴァイオリン以外の弦楽器でも演奏されることが多いため、「耳なじみがある作品では?」と神谷さん。

この曲全体を通してイメージするのは、教会の鐘だと話しました。

また、足のペダルを使って演奏するオルガンと鐘をピアノで表現するためにはその技術も要され、ピアノが活躍する作品としても知られています。

特に第2楽章はピアノの超絶技巧が必要とされ、「腕が4本欲しい」と望月さん。

静けさを帯びた美しい第1楽章の始まりから、鐘の音とともに次第に波打つ感情のように展開していくメロディーは、客席を短時間で演奏の世界に引き込んでいきました。

 

 

後半は、ピアニストの望月さんによるサティのジムノペディ 第1番のソロ演奏から始まりました。

 

 

ゆったりとした3拍子に一音一音が心地よく入ってくる魅力的な演奏でした。

 

 

プーランクのヴァイオリンとピアノのためのソナタについての説明は、望月さんが担当。

「フランス6人組」と呼ばれた作曲家集団の1人として知られたプーランクが、スペインの詩人ガルシア・ロルカのために作ったといわれています。

中でも第2楽章にはロルカの詩の「ギターは夢たちを泣かせる」というフレーズを、ピアノのペダルで表現していることや、ギターのアルペジオ奏法をヴァイオリンに取り入れられているそうです。

また、第1楽章と第3楽章には攻撃的な音があり、なかでも第3楽章は第二次世界大戦の最中で自由を求めたロルカがフランコ政権によって射殺されたシーンが表現されていると説明。

 

「シャンソンだったり、悲しいシーンだったり、銃撃の場面だったりと、まるで映画のようにシーンが変わるのが魅力です」と神谷さん。

 


つづくハチャトゥリアン作曲、バレエガイーヌより「剣の舞」の譜面には、弓毛ではなくスティックで叩きなさいという指示が途中にありますが、神谷さんは「これをすると弦が痛むのですが、今日は思い切り叩きました」と話して会場を沸かせました。

 

その後はプロコフィエフ作曲「ロミオとジュリエット」より<ジュリエット>、<騎士たちの踊り>、ストラヴィンスキー作曲「ペトルーシュカからの3楽章」より<ロシアの踊り>と技巧的で音の厚みを感じる演奏がつづき、最終曲に選んだのはチャイコフスキー作曲のワルツスケルツォOP.34でした。

 

ヴァイオリニストのコーテクからワルツを書いてほしいと頼まれて作ったといわれているこの作品は、

「フィギュアスケートに例えるなら4回転ジャンプを連続で3回飛ぶような感じです」

とその技巧の難しさを表現。

 

 

 

超絶技巧な演奏ながら、全体を通してワルツの上品で軽やかな余韻が残る曲でした。

 

アンコールにはディニーク作曲のひばりを演奏。ひばりのさえずりを美しいヴァイオリンの音色でを表現して終了しました。

 

 

終演後のサイン会ではアナリーゼで関心を持って初めて小ホールに訪れた人や、県外からかけつけた人などさまざまな人が神谷さん、望月さんにリサイタルの感想を伝えていました。

 

 

 

中には「フランス人の作曲家作品はあまり聴いたことが無かったので新鮮でした」という年配の男性や、「ヴァイオリンの音色の豊かさに魅了されました」という母娘で訪れた人の感想など、作品はもちろんヴァイオリンの素晴らしさを存分に感じ取れたプログラムとなりました。