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【レポート】小川典子 地域ふれあいコンサート~真田地域~

みる・きく
会場
サントミューゼ

ワンコイン 地域ふれあいコンサートvol.30 小川典子 ピアノコンサート
2017年9月13日(水)19:00開演 at 真田中央公民館 大ホール

 

サントミューゼの2017年度レジデント・アーティストである小川典子さん。

世界的に活躍するピアニストとして、イギリスと日本を拠点に多彩な活動をしています。
9月30日に小ホールで開催するリサイタルに先駆け、真田中央公民館で「地域ふれあいコンサート」が行われました。

客席には、6月に小川さんがクラスコンサートを行った真田地域の小学校の生徒の姿も見えます。

 

 

 

最初に演奏したのは、モーツァルトのピアノソナタ第12番の全3楽章。

小川さんは演奏前に各楽章の特徴を解説し、
「モーツァルトの楽曲の特徴は、幸せそうに聴こえるのにどこか物哀しい感じが漂うこと。

この曲も明るい長調のメロディーの中に哀しい様子が出てくるので、探しながら聴いてみてください」
と語りかけました。

 

 

確かに時おりふっと哀しい表情を感じる瞬間があり、それが明るいメロディーを際立たせて楽曲全体をドラマチックに彩っています。

中でも小川さんが「指の動きがとても速く、ピアニストの腕前を魅せる楽章」と話していた第3楽章では、速いテンポの中で明るい旋律と哀しいな旋律が華麗なコントラストを描き、聴く者を引き込みます。

 

 

普段はイギリスに滞在していることが多い小川さん。

サントミューゼのリサイタルで演奏予定のプロコフィエフ作曲「ピアノ・ソナタ 第7番」を先日イギリスのリサイタルで弾いたところ、なんと本番前の練習でピアノが壊れてしまったそう。
「あまりに激しい曲なので、一つの鍵盤がグラグラになってしまったんです。

それぐらい激しい曲ですので、30日のリサイタルはご期待ください」
という言葉に、客席からは笑いが起こっていました。

 

 

 

生前に親交があり、小川さんによる演奏が国内外で高い評価を得ている作曲家の武満徹。

「雨の樹素描Ⅱ」は、小説に描かれた架空の樹に発想を得て生まれた曲です。

妖しげな旋律と不規則なリズムは、雨を受け止める樹の幻想的な情景を想い起こさせるよう。

 

音が鳴っているのに静謐さを感じさせる、不思議な印象の楽曲でした。

 

 

続いて「色彩豊かな表現が特徴です」と紹介したのは、フランスの作曲家ドビュッシー。

「水の反映」は高音のフレーズがきらきらと光る水面を思わせ、繊細かつダイナミックな演奏が水の流れの凛とした力強さを表情豊かに描き出していました。

 

 

そしてプログラム最後は、ショパンのバラードを。
「ショパンの曲はピアノのあらゆる技術を必要とし、あらゆる観点からピアニストの資質を見られるように作られています」
と小川さん。

 

 

ショパンが書いた4曲のバラードの中で最も男性的だという「バラード 第1番」を時に力強く時に優美に、激しいフレーズも歌うように響かせます。

情感あふれる演奏はまさに圧巻。心地よい高揚感が会場を包み、大きな拍手が送られました。

 

 

アンコールは、小川さんが拠点を置くイギリス出身の作曲家・エルガーの作品。

管弦楽のために作られた行進曲「威風堂々」を、ピアノソロならではの澄んだ音色で演奏します。

誰もが知る名曲を、濃密な音色で聴かせてくれました。

 

 

終演後のサイン会では、ピアノを習い始めたばかりの小さな女の子に「頑張ってね」と声をかけたり、

どのCDを買うか悩んでいるお客様に気さくに内容を解説したりと、自然体の小川さんの姿が印象的でした。

 

 

「素晴らしい演奏に感動しました」と話してくれたのは、お子さん連れのお客様。

「子供が小さいので、ホールでのコンサートにはなかなか行けません。今日は家の近くでプロの演奏を生で聴けて、本当に嬉しかったです」

 

小川典子さんのピアノリサイタルは9月30日(土)14時より、サントミューゼ小ホールにて開催。

 

 

今日演奏した武満徹やドビュッシー、さらにベートーヴェンやプロコフィエフの曲など充実のプログラムです。ぜひお越しください。