【レポート】QuatuorB アナリーゼワークショップ
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QuatuorB サクソフォーンリサイタル 関連プログラム
アナリーゼワークショップ
サクソフォーンの歴史とサクソフォーン四重奏の魅力に迫る!
2017年12月18日(月)at 大スタジオ
1月20日開催「QuatuorB サクソフォーンリサイタル」に先駆けて、そのリサイタルで演奏予定の曲を中心にアナリーゼ(楽曲解説)ワークショップを行いました。
ソプラノ・サクソフォーンの國末貞仁さん、テナー・サクソフォーンの有村純親さん、バリトン・サクソフォーンの小山弦太郎さん、アルト・サクソフォーンの山浦雅也さんの順番で自己紹介をしてから、「サクソフォーンの誕生」について、國末さんを中心に話し始めました。
サクソフォーンは、外でも演奏できる音量がある、弦楽器のように豊かな音色を持つ管楽器としてアドルフ・サックスが発明しました。
彼の友人であるヴァイオリニストで作曲家の、ジャン・バティスト・サンジュレは史上初となるサクソフォーン四重奏を作曲。
これはサクソフォーンを使ったロマン派の作品としては唯一ではないかと言われているそうです。
解説につづいて、『第一四重奏曲より第一楽章』を演奏しました。
「楽器の仕組み」では、國末さん、小山さんを中心にサクソフォーンを分解しながら1つずつパーツを説明していきました。
なかでもリードの説明では、担当する楽器の大きさによって金額が異なり、気に入ったリードが手に入るまでに何枚も試さなければならず、小さなパーツながらもお金がかかること、そして10枚1セットの中でも好みの音が出せるものは1枚程度しかないなど、演奏家ならではの音に対するこだわりを感じたお話でした。
また、標高が高いところでは吹く時に力が必要などの話にも参加者からはおどろきの声が上がりました。
1920年代、「サクソフォーンの神様」といわれたサクソフォーン奏者マルセル・ミュールの話では、ジャズの奏法にヒントを受けたヴィヴラートを初めてサクソフォーンで使用したことに触れ、ミュールが独奏したイベール作曲「Concertino da camera」の音源を鑑賞しました。
つづいてリヴィエ作曲「グラーヴェとプレスト」は複雑なアンサンブルのテクニックが要される曲で、この日は実験的に伴奏とメロディーを分解して演奏。
アンサンブルがどのように組み合わさって1つの楽曲になっているのかが分かりやすく解説されました。
ここから担当は山浦さんに代わり、1月のリサイタルの後半では「現代音楽」をセレクトしているという話へ。
その中から作曲家リゲティを紹介し、「6つのバガテル 第一番」を演奏。
この曲にタイトルが無いことから、実際に聴いて想像したキーワードを集めて、タイトルを付けてみようという試みをしました。
客席からは猫がおっかけこをしているような印象を受けたという意見が出てきて「猫とネズミ」というタイトルに決定。
最後は有村さんが進行し、リサイタルで最後に取り上げる作曲家ドビュッシーについて触れ、ユーロになる前のフランスの紙幣20フランの肖像画として使われ、ヨーロッパ圏のクラシック文化に対する深さを感じるエピソードを披露。
感覚的なものを音楽に取り入れた印象派として知られていますが、彼は生涯で1曲だけサクソフォーンのために作曲しています。
とある夫人が肺を患い、その治療として肺を鍛えるためにサクソフォーンを吹くと良いと言われたことからドビュッシーに曲を作ってほしいと依頼。
しかしドビュッシーはサクソフォーンという楽器の習性をなかなか理解できなかったようで、作品が完成するまでにかなりの年月を要したということです。
完成した「弦楽四重奏曲」を今回サクソフォーン4本で演奏するなかで、例えば弦楽器で指をはじいて演奏するピッチカートをどのように表現するかなど、4人で試行錯誤しているそうです。
ドビュッシーがイメージしたものに近づけるよう、舌でリードをはじいて演奏する奏法「スラップタンギング」を取り入れるなど、追及し、挑戦しているそうです。
最後は彼らのテーマ曲「To “B” Continued」の演奏、さらには新垣隆さんに作曲を依頼した「サクソフォーン四重奏のためのバラード」について触れて終了。
1月のリサイタルではクラシックから現代曲まで幅広いラインナップの期待が膨らむワークショップでした。