【レポート】仙台フィルハーモニー管弦楽団 上田公演
- 会場
- サントミューゼ
仙台フィルハーモニー管弦楽団 上田公演
3月18日(日) 15:00開演 atサントミューゼ大ホール
約2年ぶりとなる仙台フィルハーモニー管弦楽団の上田公演。
この3月に12年間務めてきた常任指揮者を退任する、パスカル・ヴェロさんが振る華やかなオール・フランスプログラムです。
ピアノは1990年のショパン国際コンクールで日本人最年少で入賞した、横山幸雄さんです。
客席の照明が落とされ、オーケストラのメンバーが登場。
チューニングの音が鳴り止み、いよいよという期待感が高まる中、マエストロと横山幸雄さんが登場しました。
今公演では伝統的なコンサートの流れとは違うものにしたいと考えたマエストロ。
公演前半のサティの「グノシエンヌ」「ジムノペディ」とダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」を続けて演奏する構成になっています。
グノシエンヌ第1番は横山さんのピアノソロで始まり、そしてオーケストラ版の第3番、再びピアノソロの第2番へ。
「仙台フィルと横山幸雄の再会をテーマに、ソリストとオーケストラの会話を生み出すことにしました」とマエストロが考えた通り、ピアノ演奏が終わるとオーケストラが演奏し、そしてまたピアノの演奏とまさに音楽を通して会話しているかのようでした。
ピアノから静かにダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」へとつながっていきます。
テーマを繰り返す循環形式で書かれた曲の最後はオーケストラへと波及していくダイナミックな演奏。
終わった瞬間、拍手が沸き起こりました。
ソリスト・横山幸雄さんによるアンコールはドビュッシーのプレリュード第2巻より 「花火」を演奏。
横山さんの繊細なピアノの世界にじっくり耳を傾けられるひと時となりました。
休憩をはさみ後半のスタートです。
仙台フィルでは一度も演奏したことがないというラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」と、ウィンナーワルツへの礼賛として着想された「ラ・ヴァルス」を続けて演奏します。
「高雅なワルツを演奏した後、ステージに留まったまま、かの有名なワルツに続けますが、これが実によくつながるのです」
というように、ワルツという共通点を持った2曲をつなげて聴くという興味深いプログラム。
終盤、ワルツらしいテンポが明確になったところで曲が最高潮に達し幕を閉じるという、オーケストラならではの迫力を体感できました。
最後のプログラムはラヴェルの「ボレロ」。
舞踏家イダ・ルビンシュタイン夫人の依頼により作曲したバレエ音楽です。
覚えやすいリズムと繰り返すメロディが特徴で、誰もが一度は耳にしたことがあるといえるほど有名な曲です。
「この曲はソリストのための曲。
指揮者があまり指揮しなくてもいい曲で、私が両手をポケットに入れていても「ボレロ」は続きます」。
楽器を変えながら同じリズムを反復。
しだいにリズムを刻む楽器が増え音も厚みを増していきます。
単純なリズムでありながら楽器ごと色合いが異なり、多彩な響きに魅了されます。
そして最後にオーケストラが一体となってフィナーレを迎えました。
オーケストラアンコールではマエストロがコンサートマスターの西本幸弘さんを伴い退場。
再び登場した二人は真田家の家紋である六文銭をデザインした陣羽織を身にまとい、ステージ中央に。
西本さんのソロで始まったのは服部隆之「真田丸メインテーマ」です。
お馴染みの重厚感あるフレーズに、客席からは「おお~」という声が響きます。
真田ゆかりの地である上田ならではの演出に、観客からも惜しみない拍手が。
最後にマエストロが「みなさん、お疲れ様でした」と日本語で挨拶し、コンサートは終了しました。
終演後、ロビーにはマエストロを筆頭に仙台フィルのメンバーがそろい「ありがとうございました」と観客を見送ります。
そしてマエストロもファンからのサインや写真撮影に気軽に応じ笑顔を見せてくれました。
前後半ともに曲をつなげるというプラグラムにクラシックファンならずとも音楽のさまざまな楽しみ方を感じられるコンサートとなりました。