【レポート】茂木大輔監修 高橋多佳子の“生で聴く『のだめカンタービレ』の音楽会” ピアノ版
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高橋多佳子の生で聴くのだめカンタービレの音楽会 ピアノ版
2017年8月18日(金)13:00開演 at小ホール
人気マンガ「のだめカンタービレ」に登場する曲をオーケストラの生演奏でお届けする「のだめカンタービレの音楽会」。
原作の取材協力やドラマ・映画のクラシック音楽監修を務めた茂木大輔さんが立ち上げから関わり、10月のサントミューゼ公演で92回目を数える人気企画です。
今日は全国で初の試みとなる「ピアノソロ版」。
茂木さん監修のもと、オーケストラ版にも出演している高橋多佳子さんが、のだめを始め登場人物たちが演奏した曲を生で聴かせてくれました。
この音楽会シリーズの特徴が、演奏する背後のスクリーンにリアルタイムでマンガの名シーンや楽曲解説が映し出されること。
その根底には、茂木さんが長年抱いていた「知識があることでクラシック音楽の入り口が開かれ、もっと面白さを体感できる」という思いがあります。
今日のコンサートの冒頭、真っ暗なステージのスクリーンに映し出されたのは、主人公・のだめと千秋が出会った場面。
のだめがゴミだらけの自分の部屋の中で美しいピアノを奏でる印象的なシーンです。
映像と入れ替わるようにスポットライトがピアノを照らし、静かに始まったのは、のだめが弾いていたベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第8番」。
マンガで千秋のモノローグから想像していた曲が現実の音になって降ってきて、想像力が膨らんでいく不思議な感覚。
印象的なのは、マンガの具体的なシーンを見た後でも曲の印象が限定されず、むしろイメージが広がっていくこと。
長い歴史の中で、さまざまな人の思いや場面に寄り添ってきたクラシック音楽ならではの深みを実感しました。
「今日は、のだめになったような気持ちで楽しんで弾きます!」
とあいさつした高橋さん。
続いて物語でのだめが「耳コピ」してピアノで弾いた交響曲「英雄」を披露。
演奏中、背後のスクリーンには曲に合わせて「主題」など構成の解説やメロディーの特徴が映し出され、ほんの少しですがベートーヴェンの思いを受け取れたような気持ちに。
10月公演では、フルオーケストラでこの曲の第1楽章を聴くことができます。
高橋さんにとって思い入れの深いショパンの曲は2曲披露。
決して高橋さんが登場人物に重なって見えるわけではないのですが、マンガが映し出されることで曲がより生き生きと感じられたり、優しい気持ちで聴くことができたりといった感覚は、高橋さんの豊かな表現力ゆえ。
ショパンの人生も解説され、彼の祖国への思いを知ったうえで曲を聴くと、さらに印象が深まるのも面白さでした。
「ラプソディ・イン・ブルー」は、のだめたちが学祭で披露したジャジーな曲。
ピアノの音域の広さと豊かな和音で生き生きと奏で、喜怒哀楽が入れ替わり立ち替わりするような魅惑的な演奏でした。
第2部で披露したショパンの練習曲「作品10-4」は非常に難易度が高く、ピアノコンクールの課題に選ばれることが多い曲。
高橋さん自身も大学進学時の課題曲として猛練習したと振り返りますが、ピアニストになってから観客の前で演奏するのは初めてだそう。
演奏後、高橋さんは
「コンクールを受けているようでした!同じ音形で延々と弾くこの曲は、筋力トレーニングのような大変さ(笑)。
技術的にこれだけ難しいのに、芸術的にも素晴らしいのがショパンの偉大さですね」
「ペトルーシュカ」は、のだめがコンクールで演奏中、緊張のあまりテレビ番組の曲を間違えて弾いてしまって落選したエピソードのある曲。
実際に聴き比べて「確かに似てますよね」と高橋さん。
「弾くには困難を極める超絶技巧の曲」と前置きしつつも、速いテンポと複雑なリズムを美しい旋律で聴かせます。
「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、千秋が指揮するオーケストラの場面とともに。
「作曲者ラヴェルは緻密で繊細な一方、スペインの音楽やジャズの影響もあった」
という解説を実際に耳で体感できました。
「ラ・ヴァルス」では、のだめがパリに留学していた時のシーンを投影。
曲の空気感と非常に調和していたのは、音楽に生まれた土地の空気が宿っていたからかもしれません。
終演後のサイン会では、難易度の高い曲をいくつも演奏したとは思えないほどリラックスした雰囲気の高橋さんの姿。
明るくユニークな受け答えでお客様を迎えていました。
ロビーにはマンガに登場したマングースの着ぐるみも登場。
多くの人が記念撮影を楽しんでいました。
「のだめカンタービレ」の曲をオーケストラで楽しむ演奏会は、10月29日(日)15時より大ホールで上演。
高橋さんも出演します。ぜひお越しください。