【レポート】塚越慎子 クラスコンサート at 川辺小学校
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【レポート】塚越慎子 クラスコンサート at 川辺小学校
11月16日(火)
川辺小学校でクラスコンサートが行われたこの日。音楽室に入ってきた6年生の児童たちの目にとまったのは、見慣れない大きな楽器です。木琴に似ているけれど、少し違う様子。
「これ何!?」
「でっか!!」
と興味津々です。
拍手の中、まずはピアニストの武本和大さんが一人で登場。弾き始めたのは、ハチャトゥリアンによるアップテンポの曲「剣の舞」です。すると、音楽室の入り口から弾むような甲高い音色が。肩にかけた木琴を軽やかに演奏しながら現れたのは、マリンバ奏者の塚越慎子(のりこ)さんです。
演奏しながらぐるぐると歩き回る塚越さんの姿に釘付けになる児童たち。すぐ近くで聴く音色は迫力満点!速いテンポで動く華麗な手さばきにも見入ってしまいます。シンバルを交えて曲が盛り上がっていくと、体を揺らして乗り始める児童も。曲が終わると、どよめきと共に大きな拍手が起こりました。
元気に挨拶した塚越さん、「今演奏したのは、肩に掛けられるように作られた木琴です」と紹介してくれました。では、正面に置かれた大きな楽器は?
「正解はマリンバです!どんな所が木琴と違うと思う?」
すると「低い音が出る?」と一人の児童。そう、木琴で出せる音が2オクターブ半なのに対し、マリンバの音域はなんと5オクターブ。特に重要なのが「響き」です。鍵盤の下にある長いパイプによって、豊かな響きが生み出されます。「口の横に手を添えて声を出すと、よく響きますよね。それと同じ仕組みです」と塚越さん。
そんな音色を堪能させてくれたのが、サン・サーンス作曲「白鳥」。4本のマレットを使って繰り出す深い音の重なり、強弱の美しさに、児童たちはじっと聞き入っていました。
楽器には弦楽器、打楽器、管楽器があります。マリンバは打楽器の一つ。「じゃあこれは?」と塚越さんが取り出したのはタイプライター。児童たちも「昔のパソコン!?」と盛り上がります。
「こうしてキーボードを打つと、紙に字を打ち出せます。打ったら音が出る、つまりこれも打楽器になるんですよ。これを使って、1曲演奏してみましょう」
びっくりした様子の児童たち。始まった曲はアンダーソン作曲、その名も「タイプライター」です。タイプする音、行の終わりまで文字を打つと鳴る「チーン」というベルの音、紙を固定する部品を先頭に戻す「ジャッ」という音を巧みに使いこなし、リズミカルで楽しいメロディーを奏でます。児童たちも感心した様子で、大きな拍手を送りました。
続いて塚越さんが取り出したのは、川辺小学校の校歌の楽譜です。
「武本さんが、この校歌を先ほど10分ぐらいでジャズ風にアレンジしてくれました。ジャズは楽譜があるクラシック音楽と違い、大まかな部分以外は即興で弾きます。即興だから、今ここにいるみんなにしか聴けませんよ」
「えー!」、「やばい!」と嬉しそうに顔を見合わせる児童たち。実はこのクラスは音楽会でジャズ風にアレンジした曲を演奏したことがあり、ジャズに親しみがあるのです。
始まったのは、校歌とは思えないほどドラマティックで洒脱なメロディー。マリンバの音色が入るとしみじみとした温もりも感じさせ、美しいハーモニーで魅了しました。演奏後、「この曲、好きだと思った?」と聞くと大勢の児童が「うん!」と元気に頷きます。
「同じメロディーでも、リズムやアレンジを変えると曲が変わって聴こえます」
そう話して聴かせてくれたのは、童謡「うさぎとかめ」のアレンジ3種類。1曲目は明るく弾むような曲調、2曲目はしっとりと哀愁漂う雰囲気。3曲目は洒落たジャズ風のアレンジです。「どれが一番好きだった?」と尋ねると、3曲目のジャズ風アレンジが大人気。「ノリノリになれる」、「迫力があった」、「音が大きかった」と、さまざまな理由を挙げてくれました。
さらに、曲調に感じるイメージの話も。例えば先ほどの2曲目は、明るさや希望より寂しさや切なさ、悲しさを感じた人が多くいましたが、「人によって意見は違い、正解も間違いもありません。多数派に合わせる必要はなくて、音楽で自分が感じたこと、それが正解なんです」と塚越さん。
続いて取り出したのは新聞紙。「音が出るものは、なんでも楽器になりますね。新聞紙で音を出すためにはどうしたらいい?」と問いかけると、児童たちから「破る」、「振る」、「くしゃくしゃにする」、「踏む」、「叩く」と元気な声が返ってきました。
「いいですね!今のアイデアをもとに、即興でリズムを作ってみましょう」
まずは塚越さんが実演。先ほどの「うさぎとかめ」に合わせて、広げた新聞紙を殴ったり破いたり、丸めたり、自由にリズムを作ります。床に置いて足で踏むと、児童たちからは笑い声が。身近な新聞紙が楽器になった様子に、拍手が起こりました。
いよいよ児童たちの挑戦です。3種類の「うさぎとかめ」から自分が好きなものを選び、曲に合わせて一人ワンフレーズずつ新聞紙でリズムを奏で、リレーしていきます。緊張した表情の児童もいましたが、始まってみれば元気いっぱいに叩く児童や破る児童、優しく揺らす児童と、個性豊かな方法で楽しんでいました。新聞紙を裂いて音を出したり、2枚に分けた片方を棒状に丸めてもう片方を叩いたりと、ユニークな方法を試す児童も。ジャズ風アレンジは選んだ人数が一番多かったのですが、「誰一人、同じリズムの人がいませんね!」と塚越さんが感心していました。
身近な新聞紙も楽器として楽しめることを体感した児童たち。終わった後は、上履きをパカパカと叩き合わせて、「これも楽器になるね!」と言う声も聞こえてきます。音を出す喜びを発見したようです。
最後に聴かせてくれたのは、モンティ作曲「チャルダッシュ」。途中で何度もマレットを持ち替え、音色の違いを楽しませてくれました。低音を聴かせる抒情的な音色、軽やかで明るい音色、硬質で弾む音色、と音の表情が変わっていきます。上下を持ち替え、持ち手側の細い木部で小さな音を奏でる部分も。全身を使ったダイナミックな演奏で音楽室いっぱいに音を響かせ、児童たちにマリンバの、そして音楽の魅力を伝えてくれました。