【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会 -2023秋- 関連プログラム 「群響メンバーによる室内楽演奏会」
【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会-2023秋- 関連プログラム
群響メンバーによる室内楽演奏会(木管五重奏)
2023年11月20日(月) 19:00~20:00
サントミューゼ 小ホール
11月26日の群馬交響楽団による定期演奏会に先立ち、室内楽の演奏会が行われました。今回は、フルート中條秀記さん、オーボエ高﨑智久さん、クラリネット西川智也さん、ファゴット奈波和美さん、そしてホルン竹村淳司さんによる、木管五重奏です。いずれも群馬交響楽団の首席奏者で、このアンサンブルで一度やってみたかったという意欲的な編成です。
1曲目はドビュッシーの「小組曲」。4曲それぞれに「小舟にて」「行列」「メヌエット」「バレエ」という名前がついています。もともとはピアノ4手連弾としてつくられました。波を表現しているようなクラリネットにファゴットが重なる「小舟にて」。「行列」は心浮き立つような小気味よいフレーズが印象的です。かわいらしくゆったりした曲調から、感情の高まりを感じさせる「メヌエット」の展開は、ドビュッシーの他の楽曲にも通じるものがあります。「バレエ」の軽やかで生き生きしたステップから、華やかに終わります。
「お集まりいただいて、ありがとうございます」と、挨拶するのはクラリネットの西川さん。今回のプログラムのテーマは“編曲”。他の編成向けに書かれた曲を木管五重奏に編曲しています。
2曲目は、アルゼンチン出身の作曲家ラロ・シフリンによる「ニューオーリンズ」です。シフリンは映画『スパイ大作戦(ミッション・インポッシブル)』や『燃えよドラゴン』といった映画音楽の名手です。クラシックを学び、ジャズに傾倒し、パリで現代音楽の大家オリヴィエ・メシアンなどに師事しました。ニューオーリンズといえばジャズ発祥の地。ジャンルを横断してきたシフリンらしい曲です。シンコペーションのきいたリズムに力強く色気のあるクラリネットの音色がのったかと思うと、ホルンがひときわ大きくジャジーな音を響かせます。ファゴットのバリトンサクソフォンのような音色に驚かされ、木管楽器の違った魅力に目をみはります。西川さんが打ち明ける「難しい曲なので、本番前はソワソワしていました」という言葉が信じられないほど、楽しさと驚きに満ちた演奏でした。
3曲目は、メンデルスゾーンの「弦楽四重奏曲 第1番 変ホ長調」。メンデルスゾーンは“神童”で、若い頃から交響曲を書いていました。有名な「夏の夜の夢」は17歳の時に書かれています。「私は今ちょうど38歳なのですが、メンデルスゾーンは同じ歳に亡くなりました」(西川さん)。長いとは言えない生涯でしたが、早熟の天才だったこともあり、多くの曲を遺しています。
「長めの曲なので聴くのも大変ですが、演奏するのも大変ですか?」と他のメンバーにたずねると、力強く首を縦に振っていました。木管五重奏用に編曲しており、音程も発音帯も違う楽器のアンサンブルは、弦楽とはまた違う大変さがありますが、豊かな色彩感は“木五(もくご)”ならではのもの。「とてもいい曲です」という西川さんの言葉に、期待が高まります。
おごそかにはじまる第1楽章、スタッカートやピチカートが効果的に使われる第2楽章、優美な旋律の第3楽章、そして速くて鋭いスリリングな展開に引き込まれる第4楽章。メンデルスゾーンらしい流麗かつ充実感のある曲と、その音楽世界を十分に表現した演奏に、大きな拍手が送られます。
アンコールは「ニューオーリンズ」の後半です。とぼけたようなホルンに歌うクラリネットの掛け合いが楽しく、名残惜しむようなオーボエのソロで終わります。
上田市にお住いのご夫婦は、「素晴らしい演奏でした。暖かな日の午後に聞きたいような演奏でした」と笑顔で感想を聞かせてくれました。クラリネットを演奏している女性は、「木管五重奏はなかなか鑑賞できる機会がないので、とてもよかったです。プログラムも、“ザ・木五”とは違うアレンジがきいていてよかったです」と満足そうでした。
【プログラム】
ドビュッシー/小組曲
ラロ・シフリン/「ニューオーリンズ」
メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲 第1番
【アンコール】
ラロ・シフリン/「ニューオーリンズ」(抜粋)