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【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会 -2023秋-

みる・きく

【レポート】群馬交響楽団 上田定期演奏会-2023秋- 
2023年11月26日(日) 15:00開演
サントミューゼ 大ホール

2023年秋の群馬交響楽団による定期演奏会は、世界的なクラリネット奏者であり指揮者でもあるポール・メイエ氏を初めて群響に迎えたプログラムです。

1曲目はモーツァルトの『交響曲 第38番 ニ長調』。初演された土地である「プラハ」というニックネームがついたシンフォニーです。2台のティンパニが前方下手に置かれ、弦楽器以外はフルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペットという編成。生涯で約40曲の交響曲をつくったモーツァルトとしても、古典派交響曲としても円熟を迎えていた時期の作品です。明快で美しい旋律に彩られた楽曲が、メイエさんの快活な指揮で息を吹き込まれました。

続いては、メンデルスゾーンの『コンチェルト・シュトゥック 第1番、第2番』。2本の独奏クラリネットのための曲です。コンチェルト・シュトゥックは、日本語に訳すと「小協奏曲」「演奏会用小品」という意味です。

この曲は、19世紀前半に活躍したクラリネットの名手・ベールマン親子のために書かれました。息子のカールがつくるお菓子と物々交換的に新作を依頼したことがきっかけとなりました。カールがお菓子をつくっている間にメンデルスゾーンが作曲し、その日の夕方には第1番が完成。すぐさま3人で演奏したというエピソードが残っています。

クラリネットを携えたメイエさんと、群響首席クラリネット奏者・西川智也さんが舞台に現れます。指揮者が演奏しながら指揮をする“吹き振り”で、2本のクラリネットの掛け合いからはじまります。まるで会話をしているような2本のクラリネットは、時に優美に、時にスリリングに、存分に技巧を披露します。どこまでも軽快で、温かみと華のある音が、ホールの隅々まで響きます。

大きな拍手と歓声が沸き起こりました。2回のカーテンコールを経て、アンコールは『2本のクラリネットのための二重奏曲』より第1番です。大バッハ(ヨハン・セバスチャン・バッハ)の息子、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(C.P.E.バッハ)の作品で、先ほどの演奏の興奮を優しくなだめるような穏やかな楽曲です。

休憩をはさんで3曲目は、スイスの現代音楽家であるミカエル・ジャレル作曲の『ドビュッシーによる3つのエチュード』。ドビュッシーがピアノ用に書いた『12の練習曲集』から、9・10・12曲を管弦楽用に編曲したものです。原曲は技術も表現力も難易度の高い作品で、管弦楽によりさらに緻密かつ洗練された響きに変わっています。

モーツァルトの交響曲とは対照的に、さまざまな木管楽器、打楽器などが組み込まれます。3曲目は途中、ドビュッシーの名曲『海』を連想する箇所があり、繊細な音がさざ波のように広がります。

そして最後は、ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』。ムソルグスキーが親友の画家ハルトマンの死後、遺作展からインスパイアされてつくったピアノ曲です。“管弦楽の魔術師”と呼ばれたラヴェルのオーケストレーションで、華やかさと素朴で力強い響きを持つ原曲がさらにカラフルになり、多種多様な楽器が目にも楽しい1曲です。

ロシアの五音音階にもとづいた有名な主題が、輝かしいトランペットの独奏で響きわたります。途中、主題をもとにした「プロムナード」をはさみながら、土中の金銀のありかを知る小人・グノームの不気味さを表現した「グノームス」からはじまり、それぞれに想像力をかきたてられるタイトルがついた10曲が続きます。

終曲の「キエフの大門」はひときわ堂々たる演奏です。メイエさんの指揮で、オーケストラがひとつの巨大な生き物のようにうねり、エモーションの波が押し寄せます。

上田市から来られた女性ふたりは、「よかったの一言です。クラリネットのデュオも、『展覧会の絵』も素晴らしくて。ふだんなかなか聴く機会がないので、いい時間になりました」と感想を聞かせてくれました。知人が群響のヴァイオリン奏者であることから観に来られた千曲市のご夫婦は、一番印象に残ったのは「やはり『展覧会の絵』でしょうか」と、満足そうに答えて会場を後にしていました。

【プログラム】
モーツァルト/交響曲 第38番 ニ長調 K.504 「プラハ」
メンデルスゾーン/コンチェルト・シュトゥック第1番、第2番
ミカエル・ジャレル/ドビュッシーによる3つのエチュード
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲《展覧会の絵》
【ソリスト・アンコール】
C.P.E.バッハ/2本のクラリネットのための二重奏曲より第1番