【レポート】大友直人~アナリーゼシリーズvol.30~
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アナリーゼワークショップ vol.30
群馬交響楽団 上田公演~2019春~ 関連プログラム
アナリーゼワークショップ
お話:大友直人(群馬交響楽団音楽監督)
2019年2月20日(水) at 多目的ルーム
3月21日に行われる「群馬交響楽団 上田公演~2019春~」のプログラム、ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」、ベルリオーズ「幻想交響曲」について、指揮者の大友直人さんによるアナリーゼワークショップが行われました。
ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」は名曲として知られていますが、意外にもコンサートでの演奏は少ない曲といわれています。
その理由は演奏時間が50分近くあり、ヴァイオリニストにとって緊張を強いられる難曲であるにもかかわらず、音形がシンプルで超絶技巧を披露する見せ場があまりないこと。
なので「円熟した経験豊かな方が演奏することが多い曲です。そういう観点からいうと、フランスの名ヴァイオリニストであるパスキエさんはこの曲にふさわしい方だと思います」と大友さん。
20年以上、共演を重ねてきた中で、いつかパスキエさんにベートーヴェンを弾いてもらいたいと思っていたといいます。
プログラム後半はフランスを代表するベルリオーズの「幻想交響曲」です。
ベートーヴェンと近い時代で活躍したベルリオーズ。若い頃、ベートーヴェンの曲をパリのコンサートで聴き大感激し、自分も交響曲を書いてみようと思って完成したのが今回の幻想交響曲です。
「ベルリオーズの作品がいかに斬新で独創的で革新的であったか。譜面の景色から違います。若い頃から何度も演奏していますが、リハーサルをするたび、コンサートをするたび、斬新なアイデア、オーケストレーションのチャレンジングな姿勢を含めて本当に天才的な作曲家だと思います」と大友さん。
一般的にシンフォニーは4楽章で構成されることが多いですが、この曲は形式にとらわれず5楽章からなっています。
そして最初に出てくる旋律、恋をした女優のテーマが全曲通して使われています。
実際に曲を聴きながら解説を聞いていきます。
第1楽章。憧れの女優に失恋した音楽家は服毒自殺を図るものの死には至らず、夢うつつになったところから曲が始まります。
「聴いていただくとわかりますが、コントラバスがピチカートでメロディをいきなり奏でるなんてことは、当時の常識ではありえなかったこと。コントラバス奏者にとって演奏しがいのあるところ」
コントラバスのパートに注目して欲しいといいます。
第2楽章のワルツにはハープが2台登場しますが、楽譜には2台以上と書いてあるそうです。
ベルリオーズ以降、ハープを使う曲はたくさんありますが、1台で演奏できる曲が圧倒的に多く、最初から2台というのはベルリオーズならではの発想力といいます。
第3楽章は田園の風景。長い曲ですがユニークな仕掛けがいろいろあります。
最初の仕掛けは羊飼いのフエのメロディが飛び交う場面です。
「近くで聴こえたり、遠くで聴こえたりするのは、舞台上のイングリッシュホルンに、舞台裏にいるオーボエ奏者がこだまのように合わせているからです。コンサートホールで演奏することを想定し、音を立体的に使うアイデア」は前代未聞のことだったと思います。
最初から舞台裏にオーボエ奏者を1人用意しておく場合と、前の楽章が終わった時、舞台上のオーボエ奏者が舞台裏に移動する場合と2パターンあるようですが、どちらのパターンになるかは当日のお楽しみです。
またティンパニー奏者は通常1人の場合が多いですが、この楽章の終わりでは4人の奏者が雷の音を演奏します。
なぜ4人かというと「ティンパニーの効果を出しながら、4つのパートでハーモニーを作るということを試したのです。4人の打楽器奏者がティンパニーを演奏するのは視覚的にも楽しんでいただけると思います」
ステージ後方、ティンパニーに注目してください。
第4楽章では「冒頭、2人のティンパニー奏者がソリスティックな演奏をします。そして注目はファゴット。通常2人のところ、この楽章は4人で演奏します。音の大きさはもちろん、独特の響きも楽しめます」
第5楽章のフィナーレは絢爛豪華、アイデアにあふれた曲です。
「おもしろい仕掛けとしては舞台裏から鳴る鐘です。チューブラーベルで代用することもありますが、群響はチューニングした鐘を持っているので、こちらを使う予定です。鐘の音にも注目してください」
2台のハープや4本のファゴット、イングリッシュホルンに4人のトランペットなどユニークな楽器編成や鐘、舞台裏を使った演出など、斬新で革新的なベルリオーズの幻想交響曲ならではの魅力を垣間見たワークショップとなりました。
「群馬交響楽団 上田公演~2019春~」は3月21日(木)に開催されます。当日の演奏をぜひお楽しみに。
公演の詳細はコチラ