【レポート】新居由佳梨~地域ふれあいコンサート vol.42
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ワンコイン 地域ふれあいコンサートvol.42
新居由佳梨 ピアノコンサート at 丸子文化会館 小ホール
2018年9月8日(土)14:00開演
プログラム
エルガー:愛の挨拶
スカルラッティ:ピアノ・ソナタ イ長調 K.208
ラフマニノフ:前奏曲 op.3-2 嬰ハ短調「鐘」
ドビュッシー:映像第1集より 水の反映
ドビュッシー:版画より 雨の庭
リスト:ラ・カンパネラ
ドビュッシー:アラベスク第1番
ショパン:バラード第1番 ト短調 op.23
アンコール
映画「海の上のピアニスト」より「愛を奏でて」
雨が降り、秋の涼しさを感じる週末に開かれたワンコインコンサート。この日はピアニスト・新居由佳梨さんが出演し、丸子地域内外から多くの人が詰めかけました。新居さんはコンサートの数日前から上田入りし、地域にある4つの小学校に出向いて5年生にクラスコンサートを行いました。それもあって当日は小学生も多数来場していました。
「コンサートのはじまりの挨拶代わりに」と新居さんがセレクトしたエルガーの「愛の挨拶」から演奏をスタート。多くの人が知っている耳なじみが良い曲と、演奏のみならず新居さんの表情の美しさも合わせて堪能できる内容でした。
スカルラッティがいた時代はまだピアノではなく、爪で弦を弾いて振動させて音を出すチェンバロが使われていました。「ピアノ・ソナタイ長調K.208」はチェンバロのために作られた曲でとても静かな印象を受けます。それから200年後のラフマニノフの時代には今あるピアノの形になり、「チェンバロとは異なり、小さな音から大きな音まで豊かな響きを出すことができ、遠くまで聴こえるようになりました。これから演奏する「前奏曲 鐘」では、大小さまざまな鐘の音が感じられます。どれくらい音の大小を感じるか聴いてください」と対照的な2作品を続けて演奏しました。
中盤のトーク時間には、ピアニストがどうやって演奏をするのか、何を意識して演奏するのかを解説。新居さんは左右の音のバランス、1本1本の指の強弱などに気を遣い、「どのように音に表情をつけるのか」を意識している話をしました。会場に見えていた小学生からは、「楽譜通りに演奏するだけではないことを知れて良かった」と、技術面についての話も時折演奏を交えながらわかりやすく説明していたのが印象的でした。
つづいて演奏したのは、ドビュッシーの2作品です。「映像第1集より 水の反映」について新居さんは、「ペダルを踏むと音が響くという特徴を活かした作品で、わざと次の音と混ぜて抽象的なイメージが生まれていきます」と話し、水面に何が写っているのか想像しながら聴いてほしいと観客に促しました。もう1作品の「版画より 雨の庭」については、「スタッカートを多用することで、どう雨が変化していくのか感じ取ってみてください」と、聴きどころ、作品の演奏に関する特徴を交えて紹介しました。どちらの作品も、音から感じる場面を心の中で自由に想像できるような演奏でした。
リストの「ラ・カンパネラ」は、「跳躍したオクターブの音を正確に弾くなどの跳躍技術と、レの音に込めた鐘の音がずっと響いています。ラフマニノフとはまた違う、鐘をお楽しみください」と話して演奏。終わった瞬間には客席から「ブラボー!」との声が上がりました。
再びドビュッシーの曲に戻り、「アラベスク第1番」で柔らかな美しいメロディーに浸った後は、新居さんが「ドラマチックで好きな作品」だという、ショパンが5年もの月日をかけた作品「バラード第1番 ト短調 op.23」で締めくくりました。
近年はテレビドラマやアニメ、ゲーム音楽などのレコーディングでも活動している新居さんがアンコールに選んだのは、映画『海の上のピアニスト』から「愛を奏でて」を演奏。エンニオ・モリコーネによるこの作品は、映画の中でも印象的なシーンで使われています。主人公のさまざまな感情が静かに旋律に込められた、とても美しいメロディーが余韻に残りました。
終了後はCDを購入した大人だけでなく、アウトリーチで訪れた小学校の子どもたちも新居さんに声をかけていました。普段のコンサート会場とはまた違う、アットホームな雰囲気も「地域ふれあいコンサート」の魅力と言えるのではないでしょうか。
11月10日のリサイタルもどうぞお楽しみに!
リサイタルの詳細はコチラ