【レポート】新居由佳梨ピアノリサイタル~〜幾重にも重なり合う旋律〜 ポリフォニー音楽 を中心に
- 会場
- サントミューゼ
新居由佳梨ピアノリサイタル
幾重にも重なり合う旋律~ポリフォニー音楽を中心に
2018年11月10日(土) at 小ホール
プログラム:
第一部
J.S.バッハ/主よ、人の望みの喜びよ BWV147
J.S.バッハ/イタリアン協奏曲BWV971
第1楽章 (表記無し)
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 プレスト
J.S.バッハ/フーガの技法 ニ短調BWV1090より「コントランプクトゥスⅠ」
C.フランク/プレリュード、コラールとフーガ ロ短調
第二部
M.ラヴェル/ソナチネ 嬰へ短調
第1楽章 中庸の速さで
第2楽章 メヌエット
第3楽章 生き生きと
三善晃/ピアノ・ソナタ
第1楽章 アレグロ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 プレスト
アンコール:
D.スカルラッティ/ピアノ・ソナタ
秋が深まる季節にピアニスト新居由佳梨さんのピアノリサイタルが開かれました。
この日のプログラムの前半ではポリフォニー音楽を中心に、その代表的な作家であるバッハと彼の作品に影響を受けたといわれるフランクに焦点をあてました。
登場した新居さんはバッハ作曲【主よ、人の望みの喜びよ BWV147】を演奏。
ポリフォニーとは日本語で「多声音楽」と言い、メロディーが複数同時に進行しているのが特徴で、
「右手と左手が異なる旋律を奏でながらも対話をするように曲が進んでいきます」と新居さん。
続く【フーガの技法】は未完の大作として知られながらも、リサイタルなどで聴く機会が少ない作品です。
フーガとは対位法による音楽形式で、メロディーを複数の声部が応答して追いかけっこをするようなイメージでくり返していく特徴があります。
第1楽章ではシンプルなフーガから始まりますが、第3楽章は右手と左手が対話をするように進行。第2楽章だけは和声的な様式で進行するホモフォニー(単声音楽)からなり、ガラリと雰囲気が変わるのもまたこの曲の面白さです。
3曲のバッハ作品を終えて、作曲家フランクの紹介へ。
ベルギー出身ながらフランスで活躍した作曲家の1人で、バッハの作品に大きな影響を受けました。
新居さんは「作品からその影響を垣間見ることができます」と言い、なかでもドラマチックで大好きな作品というポリフォニーをモチーフにした全3部作で構成されている【プレリュード、コラールとフーガ ロ短調】を演奏しました。
第二部では、ラヴェル作品の中でも好きだという人が多い【ソナチネ 嬰へ短調】を披露。
もの寂しげな第1・2楽章を経て、第3楽章では「生き生きと」と付けられているようにリズムが豊かに変わり、颯爽としたラストに心地よい余韻を感じる作品でした。
最後は新居さんが尊敬する作曲家の1人である三善晃さんの「ピアノ・ソナタ」を演奏。
ドレミファソラシドの7音全てが使われているのが特徴で、たくさんの聡明な音が空間に溢れ出していくような作品でした。
唐突に途切れるように終わるラストは曲の世界からふと我に返るような感覚でした。
初めて三善晃さんの音楽を聴いたというお客様からは、「響きが良いホールで、これほどまでにたくさんの音が湧き出るようなイメージを持ちました」と満足した様子も感じられました。
アンコールにはスカルラッティの「ピアノ・ソナタ」を演奏。
ソナタと言いながらも非常に短い曲で、三善晃さんの曲とは対照的に音が少なくシンプルで、美しい音色が余韻に残りました。
アウトリーチが良かったからと初めてサントミューゼ の小ホールに訪れたお客様からは「ホールで聴くと、音や響きの違いを感じました」、クラシックをよく聴くという観客からは「なかなか挑戦的なプログラムでした。その分面白かったです」という声もあり、ポリフォニー音楽をテーマに新たなクラシック音楽の魅力を感じ取ることができたのではないでしょうか。