【レポート】高橋多佳子~アーティストインレジデンス~2019年9月編
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高橋多佳子~アーティスト・イン・レジデンス~2019年9月編
クラスコンサート in 上田市立塩川小学校
2019.09.12(木)
ピアニストの高橋多佳子さんによるクラスコンサートが上田市立塩川小学校で行われました。
5年生2クラス37人を前に高橋さんは、「音楽やピアノの素晴らしさを感じてもらえればと思います。まずは静かな曲から聴いてください」とピアノを奏ではじめます。
演奏後、曲の印象を高橋さんが「朝と感じましたか。それとも夜と感じましたか」とたずね、子どもたちはそれぞれ挙手をしました。
高橋さんは1曲目がドビュッシーの「月の光」という曲であることを明かしつつ、
「感想はそれぞれあっていいので、これが正解という答えはありません。ドビュッシーは月の光が差し込んでいる様子をイメージしましたが、朝のさわやかさも感じられます」と述べました。
塩川小学校では金管バンドの活動が活発で、5年生の半分ほどが携わり、またピアノを習う子が過半数を占めるなど、音楽への取り組みが盛んです。
音楽室の壁に歴代の作曲家たちの肖像画が飾られ、名前とともに出没年、出身国、代表曲が明記されているのに目を留めた高橋さんは、ドビュッシーが今、生きていれば何歳かを子どもたちに問います。
すると、あっという間に「157歳!」と答えが返ってきました。
2曲目は、「きっとみんなが知っている曲です。特に左手のリズムに注目してください」と高橋さん。
軽快な曲がはじまると、うなずきあう子どもたち。音楽会でもよく演奏されるモーツァルトの「トルコ行進曲」です。
モーツァルトはトルコの音楽のリズムを取り入れて作曲したそうです。
そのリズムを教えてもらって子どもたちが手拍子を打つと、それに合わせてもう一度、高橋さんは聞き覚えのあるフレーズを演奏してくれました。
3曲目はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」です。
本来はオーケストラのための曲ですが、「ピアノは万能で、何十人もの演奏をひとりで弾くことができます」と高橋さんは言います。
まずCDでオーケストラの演奏を聴いたあとに、ピアノ演奏を聴きました。遜色のない迫力のある音に引き込まれました。
「次は、ピアノに人生のすべてを捧げた人の曲です。39年という短い間に、たくさんのピアノ作品を生み出しました」。
そして高橋さんはショパンの「ノクターン」を弾きます。
祖国ポーランドが分割されて他国に支配されていたことと、病弱だった自身のつらさを重ねた、もの悲しい曲です。
続く曲は、エチュード「革命」。
一転してショパンの烈火の怒りが表現されています。ロシアからの独立をかけて蜂起したポーランドの革命が失敗に終わり、その怒りと悲しみを込めた曲といわれています。
そして羽生結弦選手がスケート競技の際の曲に選んだ「バラード1番」を、「ショパンのいろんな感情が表現されている曲」として演奏しました。
最後の曲を前に、高橋さんは子どもたちをピアノのまわりに集め、ピアノの仕組みについて説明をします。
鍵盤を押さえると白いハンマーが弦を叩き、音が出ること。ひとつの音につき3本の弦が張ってあること。足元にある左端のペダルを踏むと鍵盤とハンマーがずれ、弦を2本だけ叩くので音が小さくなること。などなど。
子どもたちはグランドピアノを覗き込みながら、興味深く聞き入りました。
そのまま最後には、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を聴きました。「本来はオーケストラと一緒に弾く曲ですが、今日はオーケストラの部分もピアノで弾きます」という言葉に驚かされます。
間近で聴くピアノの音色は、身体の中から慄すように響きました。
演奏を終えた高橋さんは、「ピアノとスポーツは似ていて、毎日練習することで夢へ到達することが可能になります。
みんなも毎日練習して、夢に近づいてください」と子どもたちに語りかけました。
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地域ふれあいコンサートvol.47~真田中央公民館
2019.09.12 19:00~
つづいて夜には真田中央公民館を訪れ、1時間ほどのミニコンサートを開きました。
平日の夜にも関わらず集まった120名以上の来場者のなかには、クラスコンサートに参加した地元の小学生たちも多く、「また高橋さんの音楽を聴きたくてお母さんにお願いしてきました」と親子での参加が多いのが印象的でした。
今回は「オール・ショパン・プログラム」で構成され、1曲目にはショパンが18歳の時に作曲した「ポロネーズ」を演奏。
ポーランドの民族舞踊であるポロネーズをベースに、作曲した当時、十代だったというショパンの溌剌とした若さや喜怒哀楽の感情を感じさせる曲調が印象的です。
つづいて演奏したのはショパンの代名詞と言われている「ノクターン」です。ショパンの遺したノクターンは21曲ありますが、特に有名なのが第2番 変ホ長調 作品9-2で、
「この曲が書かれた当時のポーランドはロシア、オーストリア、ドイツに支配されていた悲しい時代で、祖国への想いが感じ取れます」
と高橋さん。
3曲目の「マズルカ」は、ポーランドに伝わる舞曲の総称で、リズムやテンポによってマズル、クヤーヴィヤク、オベレクなどに分類されます。
「実はマズルカはポーランド国歌にも使われています」と豆知識も披露。つづいて演奏した「バラード」は、「演奏するたびに感動する」と高橋さん。
どちらの曲も心を揺さぶる素晴らしい旋律でした。
5曲目には再び「ノクターン」を選曲。恋人のジョルジュ・サンドとマズルカ島へ行った先で死の淵をさまよい、奇跡的に一命をとりとめた後の作品で、ショパンが30歳前後だったといわれています。
「10代のころに作ったものとは印象はガラリと変わり、とても力強い、生命を感じます」と演奏しました。
最後のトークでは、「私が行った小学校の子たちはいますか〜?」と確認。20名近い子どもたちが一斉に手を上げる様子を見て、嬉しいを連発する高橋さんに会場は一気に和やかな雰囲気に包まれました。
「またこうやって会えるのが本当に嬉しいです。次回はコンサート会場でも会えたら嬉しいです」と締めくくり、これまた力強い作品「スケルツォ」を演奏。鳴り止まない拍手に応えて、アンコールには「子犬のワルツ」を演奏しました。
終演後には子どもたちは高橋さんのもとにかけつけて、コンサートの感想を伝えたり、一緒に記念撮影をしていました。
ほかにも松本市からかけつけたという小学生は、「どうやったら上手にフォルテッシモを弾けますか?」と質問し、高橋さんはそのコツを丁寧に教えていました。
「地域ふれあいコンサート」が始まって6年、子どもたちにとってもプロの演奏や言葉を間近で体感できる機会になっていることを感じ取ることができました。
11月16日(土)開催の「高橋多佳子ピアノ・リサイタル」もどうぞお楽しみに。
リサイタルの詳細はコチラ