サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】地域ふれあいコンサートvol.59 田中拓也(サクソフォン)&中野翔太(ピアノ) デュオ・コンサート

みる・きく
会場
サントミューゼ

2020年12月10日

コンサートホールで鑑賞するコンサートよりも、アーティストと身近な距離で向き合い、気軽に音楽を楽しめる“普段着さ”が魅力の「地域ふれあいコンサート」。59回目は中央公民館を会場に、サクソフォニストの田中拓也さんとピアニストの中野翔太さんがコンサートを開きました。

細身の黒のスーツに身を包んで登場した2人は、ガーシュウィン作曲「3つのプレリュード」を演奏。もとはピアノの独奏曲として作られた作品ですが、サックスが入ることでジャズ風の曲調になります。メロウからアップテンポと、リズムが緩〜急〜緩と展開され、それまで静かだった会場の雰囲気がガラッと変化。観客はスイングしながら演奏を楽しみ始めました。

「今日は平日の夜にこんなに集まっていただき、本当にうれしいです!」「知らない曲もあるかもしれませんが、そこはトークでカバーしたいです」と2人が挨拶。

 

 

 

2曲目、「12のスペイン舞曲Op.37より第5番『アンダルーサ』」は、グラナドスが1892年から1900年にかけて作曲したピアノ曲集です。第5番の「アンダルーサ」は“祈り”を意味し、曲集の中で最も有名な作品になりました。哀愁を感じさせるメロディーは、冬の夜の寒さ、はたまたコロナ渦の現在とリンクするようでした。

 

つづいて演奏したのは、中野さんが作曲した「For you」です。「一緒に演奏しましょう」とこのタイトルが送られてきた時、「僕のために?」と、ちょっとドキっとしました(笑)と田中さんがおどけると、「これは新型コロナウイルスの自粛期間に我が子と触れ合い、遊ぶ中で生まれた曲です」と中野さんがつっこむように説明。そのやりとりに観客もおもわず笑顔になりました。音階に「レ」と「ミ」が多用されているのが特徴で、子どもとの楽しい時間を思わせるリズミカルな作品でした。

 

 

 

 

「これから演奏する3曲は、上田地域の小学校で行なったアウトリーチで演奏した曲です。音楽を楽しむ時間を小学生とどのように共有しようか考えて、あえてタイトルを伝えずに演奏し、子どもたちが曲の雰囲気からどのようなタイトルをつけるか、また、絵が描かれたパネルを複数枚用意して、どの絵が曲のイメージに合うかなどを聞いてみました。子どもたちの言葉からは思いがけない素敵な表現や連想があって、僕たちも楽しかったです」と田中さん。そして、「上田地域から感じる心地よい雰囲気は、そこに暮らす皆さんの人柄にも表れていると感じました」と中野さん。

そして、小学生たちにも披露したグバイドゥーリナ作曲「森の響き」、サン=サーンス作曲「白鳥」、ヴィラ=ロボス「黒鳥の歌」と自然や生きものに焦点をあてた曲を演奏しました。

 

 

 

そして最後は、吉松隆作曲「ファジィバード・ソナタ」へ。ジャズやロック、クラシックなどさまざまなジャンルが融合するこの曲は、まさにタイトルどおり“ファジィ(曖昧さ)”で、ジャンルを飛び越えた面白さが凝縮。全3楽章で約15分あるこの曲は、時間が進むにつれて縛りが薄れて自由になり、最後は即興となるライブ感が醍醐味です。

「実際に観客がいる前でコンサートができる幸せをかみしめました」と締めくくり、ミヨー作曲「スカラムーシュより『ブラジルの女』」をアンコール曲に演奏。ブラジル音楽のさまざまなリズムが曲中に盛り込まれ、あたたかな雰囲気を会場いっぱいに残して、この日のコンサートを終えました。

 

■プログラム

ガーシュウィン/3つのプレリュード

グラナドス/12のスペイン舞曲Op.37より第5番「アンダルーサ」(ピアノ・ソロ)

中野翔太/For You

グバイドゥーリナ/森の響き

サン=サーンス/白鳥

ヴィラ=ロボス/黒鳥の歌

吉松隆/ファジィバード・ソナタ

 

■アンコール

ミヨー/スカラムーシュより「ブラジルの女」