サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター・上田市立美術館) おかげさまでサントミューゼは10周年

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【レポート】デュオ・レゾネ アナリーゼワークショップvol.14

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サントミューゼ

6月23日(金)アナリーゼ ワークショップ

サントミューゼ小ホール

 

小ホールのステージ上で行われたデュオ・レゾネによるアナリーゼ(楽曲分析)。テーマは、「クラリネット徹底解剖」です。

 

 

まずはクラリネットの成り立ちを知るため、7つのパーツに分解して解説。

 

 

 

クラリネットは、吹き口のマウスピースに装着した「リード」というパーツを息で震わせることで音を出す楽器です。亀井さんが使うマウスピースにはゴムが使われていて徐々に磨耗するため、半年に一度は交換して響きが軽くならないよう気をつけているそう。

 

続いて、クラリネットの歴史を紐解いていきます。木管楽器の中でも比較的新しく、18世紀前半に発明されたとされるクラリネットの前身は、リコーダーに似た古楽器「シャリュモー」。これに音孔を押さえるパーツ「キイ」を取り付けることで音域を広げ、現在の形になりました。

 

 

ここで亀井さんが披露したのは、ベルギーの蚤の市で見つけたという約180年前のクラリネット。キイの数は、現在より少ない13個。吹いてみると柔らかな音色、少し暗いトーンが印象的です。

 

温かみのある音色を生み出す素材は、グラナディラという樹木。海外の工房で、職人が堅い木材を一つひとつ手作業で削り出す様子を写真で紹介しました。

クラリネットの特徴の一つが、多くの同族楽器(仕組みは同じで大きさの違う楽器)があること。それぞれ音色や音域が違い、曲の調性に合わせて使い分けます。

中でもよく使われる4種類を実際に演奏。楽器が長くなるほど低音が出るのが特徴で、一般的に多く使われる「B(ベー)管」や「A(アー)管」に比べると、短い「E♭管(エスクラ)」は甲高くシャープな音色です。

 

長い「バスクラリネット」は、ピアノの最低音に近い音まで出すことができる楽器。心地よい低音がボンボンと響いてきます。

「オーケストラでは目立たないんです」

 

 

と笑いながら披露したのは、『くるみ割り人形』から「金平糖の踊り」のバスクラリネットのソロ。ピアノに対する合いの手のようで、控えめながらも独特の存在感を放ちます。

「B管とA管は音域があまり変わらないけど、どう使い分けるんですか?」

と鈴木さんが質問すると、

「簡単に言うとA管はシャープ系、B管はフラット系。作曲家は楽譜にA管かB管かを指定するんですよ」

と亀井さん。

試しにシューマンの『幻想小曲集』の第2曲をA管とB管で吹いてみると、A管は温かみのある音、B管は明るさを感じる音と、音色の微妙な違いが感じられました。

「シューマンは、明るさでなく温かさを求めたからA管を指定したんですね」

 

続いて、クラリネットを愛し名曲を残した作曲家を紹介。モーツァルトやウェーバー、サン・サーンスやドビュッシーらが遺した曲を披露しました。ブラームスは晩年、クラリネットの名奏者に出会ったことからやめていた作曲活動を再開したのだそう。

「多くの作曲家が、晩年にクラリネット作品を残しています。その作曲家の集大成ですから、演奏していて幸せですね。同じ曲でも違った魅力が見えてきて、味わい方が変わります」と亀井さん。鈴木さんは、

「クラリネットは音が溶けるし柔らかく、一緒にやりやすい楽器です。オーケストラではソロでなく誰かの後ろに回ることが多いので、そうした控えめな人間性も魅力なのかもしれない。だからこそ、作曲家も晩年に惹かれるのでしょうか」

 

最後に、『バスクラリネットソナタ』より第1楽章を演奏。低音による柔らかな旋律は、1日の終わりにふさわしく胸にしみました。

 

 

会場には、練習後に駆けつけた上田染谷丘高等学校吹奏楽班の生徒たちの姿も。

「クラリネットにいろいろな種類があったり、作曲家が楽器を指定するのは知らなかった」

「モーツァルトが好きなので、亀井さんの演奏の音色が勉強になりました」

と、新たな収穫を話してくれました。

 

 

7月22日にサントミューゼ小ホールで開催された『デュオ・レゾネ・リサイタル』のメインプログラムは、ウェーバー作曲「協奏的大二重奏曲 Op.48」。クラリネット、ピアノ共に技巧的な魅せ所が多い華やかな楽曲です。公演レポートもご覧ください。