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【レポート】群馬交響楽団上田公演 -2018秋- ロシア音楽の色彩~ラフマニノフの世界~

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群馬交響楽団 上田公演 -2018秋- ロシア音楽の色彩~ラフマニノフの世界~

2018年10月28日(日)15:00開演 at 大ホール

 

 

今年1月に開催した「群馬交響楽団 名曲コンサート」に続く、群馬交響楽団の上田公演。

オーケストラ演奏では上田初となるオール・ラフマニノフ・プログラムです。

 

指揮は日本はもとより世界中で精力的に活動している巨匠・秋山和慶さん。独奏は早くからその才能を認められ世界中で活躍する、モスクワ生まれの若手ピアニストのルーカス・ゲニューシャスさんです。

 

 

1曲目は「ラフマニノフといえば」という代表作、「ピアノ協奏曲 第2番」です。映画やフィギュアスケートのプログラムなどでも使われている、ラフマニノフの曲の中でも人気のある曲です。

 

 

第1楽章 モデラート。冒頭、ソリストであるルーカス・ゲニューシャスのピアノの和音が会場に静かに響き渡ります。オーケストラを伴って繰り広げられるピアノは躍動感があり、観客を引き込みます。

第2楽章 アダージョ・ソステヌート。ピアノにフルートやクラリネットの柔らかな音色が絡み合い、しだいにテンポを増していきます。

そして音量もスピードもあるピアノのカデンツァ。ゲニューシャスの指が鍵盤の上を軽やかに駆け巡ります。

第3楽章 アレグロ・スケルツァンド。行進曲のようにテンポよく演奏が始まります。映画やCMに用いられた聴き馴染みのある後半部分。そしてフィナーレはオーケストラへと波及していくダイナミックな演奏で終結します。

 

 

満場の喝采を受け秋山さんとルーカス・ゲニューシャスさんが退場。

超絶技巧フレーズが何度も登場する、ピアニストにとっては至難の曲といわれていますが、軽々と弾きこなしているかのようなゲニューシャスの姿は堂々としており、その実力を存分に発揮してくれました。

鳴り響く拍手に応え現れたゲニューシャスによるアンコールはウクライナ生まれの現代作曲家、デシャトニコフ「劇場からのこだま」から第5番「狩りのロンド」です。その素晴らしい演奏に拍手が鳴り止みませんでした。

 

 

休憩をはさみ後半はラフマニノフ最後から2番目の作品であり、交響曲としては最後の作品となる「交響曲第3番」。交響曲第2番の約30年後の作品です。

この間にラフマニノフは故国ロシアを離れアメリカへ。環境と心境の変化、故国への想いが作品に現れているかのようです。

ラフマニノフの隠れた名作といわれる第3番は、第2番にくらべ演奏される機会の少ない曲ですが、マエストロにとっては何度もタクトを振ってきた得意の曲です。

また4楽章制ではではなく3楽章制を採用しているところもユニークな作品であるといわれています。

 

第1楽章 レント―アレグロ・モデラート。ロシア的郷愁に満ちた第1主題。そして展開部では鋭さを強め、穏やかな余韻を残して楽章を閉じます。

第2楽章 アダージョ・マ・ノン・トロッポ。ホルンとハープで始まります。リズミカルで華やかで、そして哀愁も感じるシンフォニーです。

第3楽章 アレグロ。華やかな舞曲調で始まり、躍動感のあるメロディーへ。後半にはラフマニノフが好んで用いたことでも知られるグレゴリオ聖歌の『怒りの日』という有名なテーマも織り込まれていました。そして力強い終結とともに会場から拍手が沸き起こりました。

 

 

独特の哀愁を感じられるラフマニノフの世界にたっぷりとひたれるコンサート。観客の満足度の高さがいつまでも続く拍手にあらわれていました。

 

 

 

来年3月には群馬交響楽団音楽監督・大友直人氏を指揮に迎え「群馬交響楽団 上田公演―2019春―」も開催されます。こちらもお楽しみに。

 

【プログラム】

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18

ラフマニノフ/交響曲第3番 イ短調 作品44

※ソリストアンコール:デシャトニコフ/「劇場からのこだま」から第5番「狩りのロンド」