【レポート】桂 九雀さんによる落語ワークショップ
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桂九雀 落語ワークショップ in 犀の角
2018年9月6日(木)19:00~21:00
10月13日(土)に予定されている公演『桂九雀で田中啓文、こともあろうに内藤裕敬。笑酔亭梅寿謎解噺~立ち切れ線香の章」は、田中啓文さんの『笑酔亭梅寿謎解噺』を南河内万歳一座の内藤裕敬さんが第1部で脚本・演出し、第2部では上方落語家の桂九雀さんによる落語会という構成になっています。
どのような魅力的な作品となっているのか、原作ファンのみならず期待が膨らみます。
この公演に先がけて開かれたのが、9月6日(木)に開催された落語ワークショップです。
9名の参加者は、「落語が好き」「話術を磨きたい」などの目的を持って参加。
普段はライブや劇などで使う舞台を高座に見立て、参加者は用意された座布団に座って講師の桂九雀さんの説明を真剣な表情で聞いていきます。
「たいらばやし」と「猫と金魚」の落語を題材に2チームに分かれて読み合わせをしていくことに。
数分間の素読みをしてから、1回目の読み合わせが始まりました。
まずは間違いなく読むことに集中しすぎて、観客に届けるという意識がないまま。
九雀さんからは普段の声量で話していても客席には届かないことや、小声のシーンでは何を言っているか分からなくなることを指摘。
ありったけの声を出してみるようにとアドバイス。
しかし普段の生活では発声に気を遣う必要がないことから、客席に届くような大きな声を出すことに苦戦する参加者に、
「もっと、もっと声を出して~!」と、まるでお囃子のようにリズミカルに指示をしていく九雀さん。
「噺家が落語の最中に楽だなと感じているときは、テンポなどが遅過ぎてお客さまは退屈だと感じているものです。
実際の会話に注目してみると、1人が話し終えるころにはもう1人が相づちや会話を始めているもの。
だから会話の間に息継ぎをせずに話してみるのもポイントです。会話の間で息継ぎをしてしまうと、単に読んでいるだけになってしまうから」
こうして再び読み合わせをしてみるものの、会話の間で息継ぎをしないようにすると早口になってしまったり、登場人物の切り替えがうまくできなくなってしまいました。
参加者の1人からは「何か1つに気をつけると、ほかがうまくできない。
1人で複数人を演じて話すことがこんなに難しいとは!」と、あらためて落語家の技量を感じ取っていく様子が見えました。
声の大きさ、息継ぎのポイント、テンポなど一つひとつ丁寧にクリアをしながら、声の強弱やトーンを変える練習も合わせてしていくと、1回目の読み合わせよりはるかに面白さが感じられるように。
「登場人物の切り替えには、自分の中でどのような人物なのかをしっかりイメージすることが大切です。
性別、年齢などイメージしていく中でも、年齢の設定が重要で、例えば『猫と金魚』に出てくる旦那は60歳、定吉は8歳と、少しオーバーにしてみる。これを旦那が40歳、定吉が30歳にしてしまうと1人で演じるには難しいから」
1回読み合わせをするたびに大切なポイントを惜しげもなく教えてくれる九雀さんに対して、参加者も集中力を切らすことなく、わずかな時間の中でどんどん変化していきました。
「落語を覚えるときは、本を徹底的に読みこむことが大事。字面を覚えただけでは間違えないで読もうとするだけで全く面白みがない。体が覚えるまで読み込んで、あれ? これはなくても行けるんちゃう?? くらいの状態にまでする。また切り替えるときには、上下(かみしも※複数の登場人物を演じるため台詞を言うときに左を向いたり右を向いたりすること)の使い方に2通りがあって、それをうまく使うこと。1つ目は客席側にもう1人の登場人物がいて、正面に向かい合っている。2つ目は左右にいる。登場人物が切り替わるごとに顔や動作を、正面か、左右かに振ることでお客さまも自然と違いが分かるようになります。今日のワークショップでより落語に興味を持てたなら、いろんな噺家の演じ方、顔の向き、角度などにも注目してみると新たな発見、面白さが感じられると思います」
と九雀さんからのアドバイスを受けて、ワークショップは終了。
今回の参加者の中には大学の先生、紙芝居の演じ手などさまざまな人が参加。
なかには落語はよく聴くという人も多く、このワークショップを経て自分の仕事や生活に活かしたい、さらには自分でも落語鑑賞会を開きたいという声が出ました。
2時間という短い時間の中で九雀さんの技術の一端を吸収できたワークショップでした。
10月13日の公演『桂 九雀で田中啓文、こともあろうに内藤裕敬。笑酔亭梅寿謎解噺~立ち切れ線香の章』もお楽しみに!