【レポート】マチ×マチ フェスティバル 2018 UEDA~鈴木ユキオ コンテンポラリーダンスワークショップ&ショーケース公演
- 会場
- サントミューゼ
マチ×マチフェスティバル2018 UEDA
11月3日(祝・土)・4日(日)
上田市内各所
色づき始めた木々が青空に映える気持ちのいい秋の2日間、上田の街を舞台に「マチ×マチフェスティバル」が開催されました。
コンセプトは「街がアートを待っている、マチにアートが出かけていく」。
サントミューゼや街なかの劇場、上田城跡公園などでライブや展示が行われ、市民や観光に訪れた人々が多彩な音楽やアート、伝統工芸との出会いを楽しみました。
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鈴木ユキオ コンテンポラリーダンスワークショップ
11月3日(祝・土)10:00~ at サントミューゼ大ホール舞台上
大ホールステージ上で行われた、振付家・ダンサーの鈴木ユキオさんによるワークショップ。
高校生から大人まで19人の参加者はダンス未経験者からバレエを学んでいる人、演劇に携わっている人など実にさまざまです。
「へそを斜め後ろに引っ張られるような感覚」「腕を上げて、実際より長さを感じて」など、ユキオさんの言葉に合わせて注意深く体をコントロールしていく参加者たち。
複雑な動きになるとそこだけに意識が集中しがちですが、
「逆のベクトルも常に意識して。一方向だけだとこもってしまうから」とユキオさん。
操り人形になったつもりの時も、吊られる感覚だけでなく足で床をしっかり押さえる。前だけでなく背中の後ろの空間を意識する。
「目を閉じて感じるだけでなく、まぶたを上げて外の情報を入れて。自分を客観的に見る感覚と夢中さの両方が必要」とも繰り返し伝えていました。
2人一組のワークは、自分の指と相手の目の距離を一定に保ち、指を自由に動かして相手の体で遊ぶというもの。
ついていく方はのけぞったり床を転がったり、コントロールされることで予想外の動きが生まれて、まるで即興パフォーマンスのよう。
参加者は息を切らしながら笑顔で楽しんでいました。
自分の体を、空気を送る「ふいご」だと思ってゆっくり開いたり閉じたり、体を丁寧に意識した動きに、見えない「空気の層」を想像して自由に動き回る遊びを加えて。一人ひとり体の重心やスピード、動きに個性があり、空間いっぱいに躍動する姿はそれだけでダンスのようです。
相手のダンスを観察しコピーするワークでは、動きのエッセンスを純化してデフォルメしたり、コピーされることで自分の動きを分析したり、「見る・見られる」を通じた発見が生まれていました。
参加者は「言葉でなく体で表現する感覚がつかめた」「中への力だけでなく外への力も体感できて気持ちよかった」「今まで思うままに踊っていたけれど、人に操られたりコピーすることで自分の癖が分かった」など、ダンスの新たな楽しさを得たようでした。
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鈴木ユキオ コンテンポラリーダンスショーケース
11月3日(祝・土)15:00開演 at 犀の角
客席と同じ高さの薄暗い舞台に、無造作に置かれた裸電球と重ねた木箱(箱馬)。
聞こえるのは夜を思わせる虫の声、古いカセットテープのように微かなノイズ。
気づけば、箱馬の奥に固く膝を抱えた人影が。眠りから覚めたようにゆっくり動き始め、空間を確かめるように手足を少しずつ伸ばして、注意深く外の世界に出てきます。
人影の正体はダンサーの鈴木ユキオさん。慎重な動作から一転、音を立てて箱馬の山を崩したりもう一度並べたりと、動きの中に緊張と緩和、重さと軽さを反復させます。
その目は力強く見開き、外の世界をしっかりと見据えています。
午前のワークショップでユキオさんが話していた「背後の空間への意識」が動きに緊張としなやかさを与え、意志のもと動いているはずなのに操られてもいるような、不思議な規則正しさもありました。
2017年の公演「20のカラダの証」は肉体一つで魅せる美しさが印象的でしたが、今回は箱馬の上に乗ったり、チョークで手足や脱いだ上着の輪郭を床や壁に写しとったりと、物との関わりを通じて体の動きや痕跡を刻み付けるような、世界と自分のつながりを意識したような構成です。
さらに、描いた線と戯れるかのように枠の中を歩いたり、避けながら歩いたり。その姿は子どもの遊びのようでもあり、あえてルールを作った動きの細部に宿る緻密さは、肉体の面白さを再確認させてくれました。
印象的だったのは、壁に電球が映し出すシルエット。かざした手の巨大な影や躍動する全身の影が、かえって肉体の生々しさを訴えてくるかのよう。電球が床に落ちて割れてしまうハプニングもありましたが、偶然とはいえ、無機質な物体と命ある体のコントラストがよりリアルに迫ってきた瞬間でした。
最後に舞台に光が差して明るい歌が聴こえてくると、解き放たれたかのように躍動するユキオさんの体。
ふっと音が消えて暗闇に戻れば微かな息遣いだけが残り、そこには確かに一つの世界の痕跡が残されていました。