【レポート】宮田大・山中惇史 クラスコンサート
【レポート】宮田大・山中惇史 クラスコンサート
2024年1月24日(水)
上田市立西内小学校
日本を代表するチェリストとして世界で活躍する宮田 大さん。3月にサントミューゼでリサイタルを開催します。それに先立ち、ピアニストの山中惇史さんと上田市立西内小学校を訪ねて、在校生18人の前でクラスコンサートを行いました。
子どもたちの拍手に包まれて、にこやかに登場したお2人。最初に宮田さんは子どもたちにこんなことを語りかけました。
「音楽を聴く時は、イメージすることを心がけてほしいと思います。これから演奏するのはサン・サーンス作曲の『白鳥』。飛んでいる白鳥、泳いでいる白鳥といった姿をイメージができると、音楽がもっと楽しくなります」
二人が奏でる音色は温かく、圧倒的な音の世界に包まれるようでした。音楽室の空気が一変し、音色の余韻も味わい深く。子どもたちは演奏する手元をじっと見つめていました。演奏後「どんなイメージが浮かんだ?」と宮田さんが尋ねると、「白鳥が飛んで湖に入ってエサを食べていた」「白鳥の一生がイメージできた」と、次々に言葉があがります。
チェロという楽器について、宮田さんが解説してくれました。弦は4本で昔は羊の腸で作っていたこと、弓は馬の毛で作られていること、弓で弦をこすって音を出す弦楽器であること。
宮田さんがソロで演奏したのは、様々な演奏技法が使われたマーク・サマー作曲の「Julie-O」。和音の美しさに圧倒されたかと思えば、手でチェロのボディを叩いて音を出したり、弓を使わずに弦を指で弾いてアコースティックギターのような音を出したり。その後に弓を使って弾くと、音のダイナミックさが際立ちました。一つの楽器でこれだけ様々な音を出せることに驚きます。
続いては山中さんがピアノについて解説。ピアノに近づいてよく観察した後に「鍵盤は全部でいくつあるでしょう。3択です。77、88、99。どれでしょう?」とクイズ。実際に一音ずつ弾きながら数えていくと、子どもたちも大盛り上がり。答えは88。多くの子どもたちが正解でしたが、「では黒鍵はいくつ?」と聞かれると「えっ!」とざわめく教室。こちらも弾きながら数えてみたところ、答えは36鍵でした。
足元のペダルの解説では、一人がピアノの屋根の中に頭を入れて大声を出しながらペダルを踏んでみました。右の「ダンパーペダル」によって声が長く響き、残響音も残ります。
ピアノソロで演奏したのは「ラ・カンパネラ」。鍵盤の魔術師と異名をとるリストの作曲で、全部の音域を使うようなダイナミックな音色。ペダルも駆使し、床全体が震えるような迫力を味わわせてくれました。
続いてはお二人への質問コーナー。子どもたちから次々に質問が飛びました。
「いつから音楽を始めましたか」と聞かれると、宮田さんは「2歳からヴァイオリンを始めたのですが、立ったまま落ち着いて練習ができなくて。座って弾くチェロにしなさいと親に言われて、3歳から始めました」と笑います。山中さんはお兄さんとお姉さんのピアノ教室についていくと飴をもらえることが嬉しくて、「もっと飴がほしいから」と7歳から習い始めたのだそう。二人とも、なんだか親近感がわくエピソードです。
チェロの仕組みについての話では、床に立てて楽器を支えるピンのエピソードを。大昔はこのピンはなく、膝の間に挟んで演奏していました。ところがある名チェリストのお腹が出ていたことから、演奏しやすいように床に固定するピンが発明されたのだそう。このピンを伝って音が床を振動させ、響きを大きくする働きもあります。実際に床に手を触れた子どもたちからは「床が震えている!」との声が。
宮田さんが使うチェロはとても壊れやすいため、戦闘機に使われるのと同じカーボン素材の頑丈なケースで運んでいること。
作曲家としても活躍する山中さん。音楽は「長調」「短調」によって表情を変えられるという話から、誰もが知る明るい曲「アンパンマンのマーチ」を「もし、アンパンマンが友達とケンカをして悲しい気持ちだったら」と仮定して短調にアレンジして演奏。その曲はとても切なく、子どもたちは戸惑いと驚きでざわざわ。「アンパンマン、どんだけショックを受けてるんだって感じですよね」と山中さんが言うと、爆笑が起こりました。
さらに「今日のクラスコンサートで皆さんに会って感じたことから作曲します」と、即興で作曲。上品で美しい、短い曲を披露してくれました。
最後にお二人からのプレゼントとして演奏したのは名曲「君をのせて」の山中さん編曲バージョンです。壮大で美しく、物語が心の中に浮かんでくるよう。チェロの温かで力強い音色が、イメージを膨らませてくれました。じっと聴き入る子どもたちの表情が印象的で、音楽の力を実感する温かな締めくくりとなりました。