【レポート】上田市立美術館コレクション 春景展
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2021年3月27日(土)~5月16日(日)開催の「上田市立美術館コレクション 春景展」の様子を担当学芸員がご案内します。
本展は、当館の6,000点を超えるコレクションの中から、梅、杏、桜、躑躅などの可憐な花々や、雪解けの清々しさを感じさせる山の風景などを選りすぐって展示するほか、上田市立博物館の所蔵品から、江戸時代に描かれた作品も併せてご紹介しています。
今回の展示には章立てはないのですが、早春から晩春へと展示室を歩きながら、春の季節の移り変わりを感じていただけるように構成してあります。
展示室に入ると、石井鶴三《山中早春》から始まり、池田満寿夫《春の海》や、本展のメインヴィジュアルにもなっている三栖右嗣《紅梅図》などが見えてきます。
三栖右嗣《紅梅図》は、5m近い大画面に、みごとな枝ぶりの巨木に満開の紅梅が咲き誇る様子が表現されています。
作品の前に置かれたMEDUTATION CHAIR(瞑想の椅子)に座って、ゆったりとご覧いただくこともできます。
本展では、19名の作家による30点の作品を展示しています。油彩画、水彩画、版画、日本画、彫刻など、多様な表現の作品が並ぶのもみどころです。屏風に仕立てられた作品が4点ありますが、そのうち3点は露出展示※してあります。筆触や質感、細部の表現などが直接ご覧いただけます。
※作品をガラスケースなどに納めずそのまま展示すること
歩を進めますと、神津港人《アンズの里》や、石井鶴三《上田獅子屏風》などが現れます。
上田市の無形民俗文化財に指定されている「上田獅子」。46年間彫塑の指導のために上田を訪れていた石井鶴三は、この獅子舞を直接見る機会があり、制作に至ったといいます。衣装の模様や特徴なども忠実に描かれています。
展示の後半に差し掛かりますと、丸山晩霞《つつじ》や、足立源一郎《春の上高地》といった、晩春から初夏を感じさせる作品群へと移っていきます。
最後のエリアに登場するのは、上田市立博物館蔵の藤原由信《四季草花図屏風》。
上田藩主であった仙石家が但馬出石に転封後の六代藩主・仙石政美の夫人(三河吉田藩主・松平信明の娘)錦子の遺品と伝わるものです。右隻には春夏、左隻には秋冬の草花が、金地と水流を背景として鮮やかに描かれている、優美で絢爛な屏風です。
展示室を後にする際には、石井鶴三《風》が皆さまを爽やかに見送ってくれます。
新型コロナウイルス感染症対策に留意しつつ過ごす状況が続いていますが、今展では少しでも明るく前向きな気持ちとなるよう願い、企画・展示しました。
美術館で、楽しく春を愛でていただけましたら幸いです。
Text=岡田智惠