サントミューゼクラスコンサート　@上田市立清明小学校

アーバン サクソフォン カルテット

2023年7月7日（金）

今年度のレジデント・アーティストであるアーバン サクソフォン カルテット。この日の午前、上田市中心部にある清明小学校5年1組の児童を対象に、クラスコンサートを行いました。

先生方と27名の子どもたちが待つ音楽室に、中村優香さん（ソプラノ）、小林浩子さん（アルト）、椿義治さん（テナー）、中村賢太郎さん（バリトン）が、『聖者の行進』を演奏しながら登場します。賢太郎さんがバリトン・サクソフォンのベル部分を子どもの頭に優しくかぶせるサプライズで、子どもたちの笑顔を誘います。

演奏が終わると、メンバー紹介です。“ゆうちゃん”こと優香さんは、「今朝も2杯食べてきました」というほどごはん大好き。“つばっきー”こと椿さんはサッカー好き。“けんちゃん”こと賢太郎さんは「水泳が得意で、息を3分間止められます」。“ころちゃん”こと小林さんは、「3歳からそろばんをやっていて、計算が得意です」と、4人の個性が垣間見える自己紹介でした。

2曲目はモーツァルトの『フィガロの結婚』より「序曲」。華やかさはそのままに、オーケストラ版は繊細な印象ですが、サクソフォン四重奏では曲の展開のスリリングさが際立ちます。ひとりの子どもが、「高い音が流れている間に、低い音が刻んでいる」と、鋭い気づきを教えてくれました。

楽器の説明に移って  、「サクソフォンは木管楽器？　金管楽器？」というクイズが投げかけられます。ほとんどの子どもたちは、金管楽器に手を挙げました。答えは木管楽器と分かると、「まぎらわしい！」という声が飛び出して笑いが広がります。マウスピースに留めているリードを子どもたちに見せると、「アイスの木のスプーンみたい」「おみくじみたい」という感想が。

音の出る仕組みを見せるべく、賢太郎さんがリードのように切った厚紙をマウスピースにセットして、息を吹きつけます。厚紙は意外にも大きな音を出しながら細かく振動します。次に音程の違う4本のサクソフォンをそれぞれ吹いてみてから、3曲目の清明小学校校歌へ。低音で支えるバリトン、リズムを刻むテナー、ハーモニー役のアルト、そしてソプラノはメロディを奏でる……という具合に、それぞれの楽器の役割がよくわかります。

ここからは、曲が表現しているものを自由に想像してもらいます。

4曲目は、「どの季節を表現しているか、想像してみてください」と伝え、短めの曲を演奏します。春夏秋冬、それぞれの季節に手が挙がります。

5曲目は、「かくれんぼをしている曲です。どんな様子だったか教えてください」と伝えてから演奏へ。演奏が終わると、実にいろんなイメージが子どもたちから飛び出してきます。「鬼が近づいてきた」「他の人がどんどん捕まっていく」「低音のところが悲しく感じた」「細かい音のところで『見つかった！』と思った」。

6曲目は、「タイトルをつけるとしたら？」とより自由に発想してもらいます。これも「謎解き」「争い」「ネコとネズミ」「ダンスパーティー」「町の大泥棒」と、子どもたちは実に多彩なイメージを教えてくれました。

3曲とも曲名は明かされないままで、正解よりも自分が感じたこと、人が感じたことを大切にしてほしいという、4人からのメッセージが伝わってきました。

「こうして聴く人がいてくれて演奏すると、ひとりで演奏している時よりも思いもよらない、いい演奏になります。聴いてくれるみんながいてくれることが大事なんです」と優香さんが話します。

最後は、『マウンテン・ロード』（マスランカ）の第1楽章で締めくくります。

子どもたちが挙手して感想を伝えます。次々と手が挙がり、「普段は聴けないきれいな音色の曲を聴かせてくれて、ありがとう」「テンポに合わせて体を激しく動かしているところがすごかったです」「クイズでひとりひとりが持っている違う意見や、聴いてくれる人が大事とか教えてもらって楽しかったです」「手がすごく早く動いていてすごい！」など、個性豊かな感想を教えてくれました。

音楽室を満たしたサクソフォンの響きに、皆満足した様子で大きな拍手を送っていました。

【プログラム】

• 黒人霊歌／聖者の行進
• モーツァルト／『フィガロの結婚』より「序曲」 （抜粋）
• 清明小学校　校歌
• ジャンジャン／『サクソフォン四重奏曲』より「第二楽章 懐かしい風景」（抜粋）
• クレリス／かくれんぼ
• ピアソラ／エスクアロ（鮫）
• マスランカ／『マウンテン・ロード』より第1楽章 序曲