【レポート】劇団☆新感線『Vamp Bamboo Burn〜ヴァン!バン!バーン!〜』
- 会場
- サントミューゼ
2016年8月5日(金)・8月7日(日)
演劇ファンでなくてもその名は知られ、いまや最もチケットが取れない劇団のひとつとして幅広い世代から絶大な支持を受けている劇団☆新感線。
エンターテインメント性の高さから“新感線イズム”という独特のジャンルを確立し、作品ごとに多彩な仕掛けを繰り出して多くの観客を魅了し続けている。
今回は、そんな劇団☆新感線初となる上田公演で、8月17日から東京で始まった本公演のプレビュー公演。
脚本は宮藤官九郎さんの書き下ろしで、演出はもちろん、同劇団主宰のいのうえひでのりさん。
ロックバンドの生演奏をバックに歌い踊る劇団☆新感線“R”シリーズのデラックス版となる“RX”だ。
宮藤さんならではのネタやパロディといった笑いの要素がいのうえさんによって絶妙に味付けされ、新感線らしい音と光で華やかに彩られたエンターテインメント性抜群の舞台である。
時は平安時代から現代へ。
1000年生き続けるヴァンパイアが現代ではカリスマ的な人気を誇るビジュアル系バンドのボーカルとなって、恋い焦がれていた女性・かぐや姫の生まれ変わりを探し求める。
そんな中で、ヤクザの抗争といったさまざまなトラブルに巻き込まれていくーーという、説明だけでは「?」が並ぶようなストーリーを軸に、さまざまなエンターテインメントがぎゅっと詰まった3時間の公演。
主演は同劇団への出演が3回目10年ぶりとなる生田斗真さん。
それを囲むのが、ヒロインの小池栄子さんやジャニーズWESTの神山智洋さん、中村倫也さん、篠井英介さんといった豪華キャスト。
さらに、橋本じゅんさんや高田聖子さん、粟根まことさんといった実力派の劇団員が脇を固め、コミカルで迫力ある演技や歌、踊り、疾走感ある立ち回りを次々と繰り広げる。
中でもキレがあるダンスや歌を披露する生田さんは、ハイスペックなのに、そのウザさゆえに周囲から「トゥーマッチ」と評される残念なキャラであることがおもしろく、それでも天性の華やかさがにじみ出てしまうところがたまらない。
そんな生田さんのビジュアルに対しては、以前に機関誌『サンポミューゼ』のインタビューでいのうえさんが
「今回のビジュアルポスターは“カマシ”で、実際はこうならない」と話していたが、確かにいい意味で“カマシ”でありながらも、ビジュアルイメージはそのままに、より深みが増しているように感じられた。
ヒロインの小池さんもまた華やかなのに、味のあるかぐや姫という役回りを見事に演じる。
神山さんのさわやかさをウリにした絶妙な笑いや、チンピラとアイドルの両方を演じる中村さんの多面的な魅力、高田さんの関西の劇団員ならではのアドリブやツッコミ、独特の沖縄方言で空気を変える橋本じゅんさんや、愛嬌のある歌唱力を披露した徳永ゆうきさん演じる役も秀逸で、各役者の濃厚で素敵なキャラクターは書き始めたらキリがない。
それらを引き立てるのは、言うまでもなくやはり宮藤さんの脚本といのうえさんの演出。
「これぞクドカン節」という言葉の言い回しや、ギリギリすぎるパロディはさすがというか、やはりのひと言。もはや安心感すらある。
さらに、鮮烈さとユーモアが溢れるいのうえさんのド派手で大迫力の演出は、もはやこのように感想を語ることすらナンセンスに思えてしまうほど。
音や照明、炎、映像を駆使した演出は演劇という枠を超え、どこまでも斬新で「今まさに演劇の最先端に触れているのだ」という感覚をおぼえさせる。
とにかく、この魅力は観なければわからない!と言ってしまっては元も子もないが、
圧倒的な世界観は単純におもしろく、鑑賞後は何かを語る言葉も無意味に思えるほど。
しかし、独特の余韻は無性に誰かと共有したくなり、改めて劇団☆新感線の醍醐味を実感。
同劇団の舞台を初めて観た人も、きっとその魅力に取り付かれたことだろう。
演劇は上演を重ねて熟成されていくともいわれると同時に、初演ならではの見所もある。
今回はプレビュー公演であったことから、ここからさらなる魅力を凝縮していく期待も抱きながら、いい意味の粗々しさも新感線の魅力を表現していたようにさえ感じた。
これだから、演劇はやめられない! そんな演劇の魅力を深く実感させてくれた大作だったと思う。