【レポート】新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」
- 会場
- サントミューゼ
「くるみ割り人形」
2017年11月12日(日) 開演14:00 atサントミューゼ大ホール
新国立劇場バレエ団による新国立劇場開場20周年記念公演。
今回上演されたのは、元英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルで現在振付家として活躍するウエイン・イーグリング氏による新制作「くるみ割り人形」。
12歳のクララが夢の中で大人になるというストーリーです。
主役のクララとこんぺい糖の精を踊るのは木村優里さん。
そして王子、クララが憧れるドロッセルマイヤーの甥、くるみ割り人形の3役をこなすのは渡邊峻郁さんです。
現実の世界。
12歳のクララの家でクリスマスパーティーが行われます。
これまでの作品と大きく違うところは、パーティーに登場するクララやフリッツなどを子役が演じているところです。
そこに物語のキーパーソンともいえるドロッセルマイヤーとその甥が到着します。
ほのかに恋心を抱くドロッセルマイヤーの甥とダンスを楽しむクララ。
憧れの人と踊る少女の夢や憧れが映し出されたシーンです。
パーティーでは謎めいた風貌のドロッセルマイヤーがマジックを披露し子ども達を楽しませます。
そしてクララへくるみ割り人形をプレゼントし、喜ぶクララ…。
ドロッセルマイヤーが時計の針を12時に合わせると背景のクリスマスツリーが大きくなり、現実から夢の世界へと変わっていくのを感じさせます。
大人になったクララが登場しくるみ割り人形と、骸骨のような恐ろしい風貌のねずみとの戦いの始まりです。
大きな仮面をつけたまま高度な振付をこなすねずみの王様。
実はほかの日程で王子を演じているプリンシパルの奥村康祐さんです。
クララをからかうようなユーモアある仕草を随所に見せつつ、くるみ割り人形たちを追い詰めていきます。
傷を負ったくるみ割り人形はドロッセルマイヤーの魔法で王子に変身し、クララと美しいパ・ド・ドゥを踊ります。
リフト、スライディング、ジャンプと重力を感じさせない疾走感あふれる踊りに会場が引き込まれていきます。
そして雪の結晶の登場です。
新国立劇場バレエ団の真骨頂ともいえるコール・ド・バレエ。
手や足の動き、回転の速度など一糸乱れぬ踊りは圧巻の美しさ。
第2幕。ねずみの王様との最後の戦いに勝利し祝宴、ディヴェルティスマンの始まりです。
スペインにアラビア、中国にロシアと、曲に合わせた踊りが終わると会場から拍手が沸き起こります。
そして「葦笛の踊り」の曲に合わせてイーグリング版オリジナルの「蝶々」が登場したあとは、花のワルツです。鮮やかなオレンジの衣裳でステージが一瞬にしてポピー畑に変身。
世界レベルと評されるコール・ド・バレエはこのステージの見どころの一つといえるでしょう。
最後にこの舞台の最大の見せ場となるこんぺい糖の精と王子がふたりで踊るグラン・パ・ド・ドゥです。
リフトを多用したこれまでのくるみ割り人形とは一線を画すダイナミックな踊りは迫力満点。
ソロでは渡邊さんがジャンプに回転とダイナミックな踊りを、木村さんは音楽に合わせた繊細な踊りを披露。
そしてコーダではピルエットからアラベスク。
夢の世界を体現したかのような華麗なフィニッシュに拍手喝采が起こります。
夢から覚めたクララ。
フリッツと一緒に玄関へ出て行くとドロッセルマイヤーとその甥が帰るところです。手を振り、別れを告げます。
振り返ると空には2人が乗ったソリ…。
あれはもしかしてと、観客の想像をかき立てます。まさにクリスマスシーズンにぴったりの演目。
カーテンコールでは鳴り止まぬ拍手の中、次々とダンサーが登場。
ドロッセルマイヤーとねずみの王様、そして主役ふたりの登場にひときわ大きな拍手が起こります。
東京フィルハーモニー交響楽団の指揮を務めた冨田実里さんも登壇し、拍手と歓声は最高潮に。
日本最高峰のバレエ団、ダンサーによる圧巻の舞台は、この日、訪れていたたくさんの子どもたちの記憶に残る作品となったことでしょう。