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地域

第49回全国大学版画展 関連企画 版表現新進作家展 2024

日程
時間
9:00〜17:00 (最終入場は16:30まで)
会場
美術館2F プロムナード

概要

2023年度「第48回全国大学版画展」から、今回で2回目の開催となる企画。
「全国大学版画展」参加大学から選抜された新進作家5名が、美術館2階プロムナードの小スペースを使ってそれぞれの展示を展開します。

銅版画から新たな表現へと発展させている河股由希。各地の郷土玩具をかわいらしい版画で表現した宮寺彩美。写真製版を用いた銅版画で版画ならではのイメージを追求する古賀慧道。柔らかい色とユーモラスな人物像で温かな画面を造り出す川村紗耶佳。自身で開発した技法でエモーショナルな夜景を描く田代ゆかり。

個性ほとばしる若手アーティストたちの展示は一見の価値ありです!

日時 11月30日(土)〜12月22日(日) 9:00〜17:00 (最終入場は16:30まで)

会場 美術館2F プロムナード

出展作家

河股 由希 KAWAMATA Yuki

《blossom》2024年
135x135mm

「りもムしわさナぎにナてから10にちまでさナぎにナた」
子供の書く文字は突然カタカナや鏡文字になり、上へ左へ縦横無尽に走る。何かが違うと思った彼はまだ握力の弱い手で力いっぱい消しゴムを引きずり、紙が破れた。
私には消そうと判断されたその勢いのあるヘンテコな文章も、物語を綴っていた世界が突然重力を感じる物質になったことも、どちらも愛おしかった。

子供との暮らしの中でよく「あと」について考えている。
初めて銅版画を刷った時の衝撃と感動が未だに私を版画制作と紐付けているに違いないのだが、銅版画に限らず、間接的に作品が出来ていく数多の方法を学ぶのが面白い。無機質なものを相手にプロセスを踏んているだけなのに、意図しない行為の「あと」が出現することがあり、版と作品との距離があることで客観的に向き合えるのが良い。
自分が以前よりも柔軟になっていく感覚がある中で、版画制作はどのプロセスにもアイディアを落とし込める遊びがあるように感じている。

<略歴>

1987年 京都市生まれ
2011年 京都市立芸術大学 版画専攻卒業
2013年 京都市立芸術大学大学院 版画専攻修了
2017年 印刷研究ユニットRIVER RETTER結成

<主な発表歴>

京都市京セラ美術館(京都)、上田市立美術館(長野)、青森県立美術館(青森)、町田市立国際版画美術館(東京)、ART ZONE京都(京都)、京都工芸繊維大学(京都)、行幸地下ギャラリー(東京)、ギャラリー恵風(京都)

宮寺 彩美

《atumeta #3》2023年
リトグラフ
可変

旅先などで買った郷土玩具たち。
どこで買ったか、どんな名前だったかいつかは忘れてしまう。
忘れないように残しておく。

「atsumeta」シリーズは集めている郷土玩具を描いたものである。集めた立体の玩具を平面作品にすることでアルバムに綴じてコレクションしているような感覚で制作した。

<略歴>

1993 東京都生まれ
2017 武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻 卒業
2019 武蔵野美術大学造形研究科修士課程美術専攻版画コース 修了
2020〜武蔵野美術大学グラフィックアーツ/版画研究室 助教

<主な発表歴>

GALLRY b.TOKYO(東京)、ギャラリーなつか(東京)、たましん本店地域貢献スペース(東京)、町田市立国際版画美術館(東京)

古賀 慧道

《A Plush Toy》2023年
銅版画
545×424mm

私は主に銅版画の写真製版(フォトエッチング)を用いて制作をしています。この技法は銅版の表面に感光剤を塗布し、透過性のある原稿に印刷した写真像を感光した後、現像することで写真像を銅版に転写する技法です。銅版上に転写され、腐蝕し、プレスされるという工程を経て紙面上に刷り取られる写真像は、元の写真とは異なる物質性を伴って立ち現れます。
絵画や写真といった画像の特質を内包しながら、そのどちらにも属さないこの版画技法を用いて、それぞれの画像領域の境界を揺さぶることができないか試みることが現在の私の関心となっています。

<略歴>

1994年 東京都生まれ
2020年 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻版画コース修了
2021年 同大学版画研究室 教務補助
2022年 女子美術大学版画研究室 助手

<主な発表歴>

[個展]
2020年 「REFLECTION OF MEMORIES」(GALLERY b.Tokyo・東京)
2021年 「遠い遠い日に」(GALLERY Art Space 88・東京)
2022年 「KNOCKING ON THE DOOR」(GALLERY 巷房・東京)
2024年 「Misty land」(Gallery SHIMIZU・神奈川)

[グループ展]
2020年 「MAU Graphic-Arts Exhibition」展(たましん本店地域貢献スペース・東京)
2021年 「MEMORIA」展(たましん本店地域貢献スペース・東京)
2021年 「form?」展(GALLERY 巷房・東京)

川村 紗耶佳

《my flower #1》2023年
水性木版画
455×605mm

記憶や故郷をテーマとして制作しています。
人は皆、記憶、故郷やそのような場所を一つは持っており、それらが存在する場所があれば、住居や活動する場所が移っても自分は自分であると気づくことができ、そこから様々な世界は拡がっていくと考えています。
そのため、どのようなポジションに居ても、自分の安心できる場所を持っていれば、自己完結できるのでないかと考えながら制作し続けてきました。
頭の中に残るいくつもの風景、そして、どこか懐かしい誰でもない誰かの記憶を集めては和紙に摺り取り、私なりの記憶の場面を作品に残してきました。
私の作品を介在して私が誰かから影響されて培ってきたものを誰かに伝えていくことができたら、また私の作品を通してそういう人が一人でもいてくれればその人が私の美術を認めてくれていることにもなり、それが今後制作していく作品、そして、私の自身の証となることでしょう。

<略歴>

2013年 京都精華大学メディア造形学科版画コース卒業
2015年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻版画科修了
2021年~多摩美術大学版画専攻 助手

<主な発表歴>

2019年 個展(養清堂画廊、東京)
2021年 上野アーティストプロジェクト「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」(東京都美術館、東京)、第4回国際木版画会議(奈良)
2022年 個展(ODD ONE OUT、香港)
2023年 個展(養清堂画廊、東京)(ギャラリー恵風、京都)
2024年 個展(高島屋美術画廊 東京新宿)

田代 ゆかり

《交差する夜》2024年
コラグラフ
370 ×375mm
《あなたが“いいね”をした。》2022年
コラグラフ
514×723mm

田代は自身で開発した版画技法である紙式メゾチント技法を用いて制作を行なっている。
技法開発へのきっかけは、中学・高校の教育現場で広めたい気持ちからであった。

開発中、失恋した知人からふとでた「彼女の家の近くのインターとか通り過ぎるだけで辛い。」という言葉から同じ景色も見る時の思い出で変わって見えるのだと気付いた。
誰もが見たことのある夜景は、見るときの感情や思い出によってどう見えるのか。
誰もが見たことのあるような夜景だからこそ、自分の思い出に当てはめ、それぞれの思いに馳せるのではないだろうかと考えた。

紙式メゾチント技法の特徴のひとつにエッジの効かない緩い滲みの明暗がある。それは自身の表現に適していたため、開発した技法を教育現場で伝えるにとどまらず、自身の制作に用い続けている。

近年は、電車・飛行機・車の中からの夜景を「共有」をテーマに制作している。

<略歴>

2007年 九州産業大学 芸術学部 美術学科絵画コース 卒業
2020年 福岡教育大学 教育科学専攻 大学院教育創造コース 修了

<主な発表歴>

個展:JINEN GALLERY(東京都)、スペース岡の泉(長野県)

展覧会サイト

第49回全国大学版画展