上田市立美術館学芸員の松井です。いよいよゴールデンウィークがやってきました。今年はなんと10連休。
遠くへお出かけされる方、近くで楽しまれる方、おうちでのんびりされる方、お仕事の方など、過ごし方はさまざまでしょうか。
当館は連休中ずっと開館しておりますので、ぜひぜひお出かけください。
さて、「ハリー・K・シゲタ Photography -光で描く世界-」のコラム第2回目、始めたいと思います。
今回は展覧会場にある作品のひとつをご紹介しましょう。
左上から強烈な光が差し、右下に向かって長く伸びる影。
規則的に並べられたドミノが、美しくもどこかコミカルなイメージを喚起させます。
《ドミノパイ》と名付けられた本作は、世界一の百貨店として知られたシカゴのデパート「マーシャルフィールド」のゲーム部門から発注を受けて制作された写真とされています。
実はこの作品、制作の裏ではかなりの苦労があったとか。
ドミノを弧を描くように並べて光で演出する、というところまではスムーズにいったそうなのですが、いざ背後から光をあってみるとドミノの表面がなんと真っ暗に。
これでは商品の紹介にならないと反対側から光を当てると、今度は影が消えてしまって面白くない。
ライトの調子や位置を何度も調整して試してみたそうですが、どうにもこうにも決まらなかったそうです。
ではどうしたのか。シゲタが最後にひらめいた方法、それは光に向かって鏡を置くこと。
鏡に光が反射することで、強すぎず弱すぎず、ちょうどきらめくような光がドミノの表面にあたり、完璧な演出ができたのだそうです。
なお、本作は広告写真としてのほか、彼の個展では必ずと言ってよいほど出品されたシゲタの代表作の一つとしても知られています。
ところで、シゲタは休みの日やプライベートではほとんどテレビを見なかったそうです。
なぜかというと、CMで自分の写真や他社の商業写真を見てしまうので休んでいる気がしないんだとか。
なので、もっぱらラジオや音楽を聴いていたそうです。
仕事では、常に写真で頭をいっぱいにしていたシゲタですが、プライベートではしっかりとオン・オフを切り替えていたようですね。
第3回のコラムもお楽しみに。